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システムの構成
本日 (日本時間2020/11/13)、macOS Big Sur 11.0.1 の配布が開始されました。過去のメジャーアップデートのナンバリング方式から、最初に出るのは11.0だと思ってましたが、今回は最初から11.0.1でした。インストール先のマシンは、こちらです。Z490マザーボードに10900Kを搭載しています。グラフィックスはRadeon RX 5700XTです。
このマザーボードに取り付けたWestern Digitalの250GB M.2 SSD, WD BLACK SN750 NVMeにクリーンインストールしました。SSDには、OpenCore 0.6.3と最新のkext類が入っていて、Catalina 10.15.7が動いています。diskutil listコマンドで見ると以下のようになっています。
% diskutil list /dev/disk0 (internal, physical): #: TYPE NAME SIZE IDENTIFIER 0: GUID_partition_scheme *250.1 GB disk0 1: EFI EFI 209.7 MB disk0s1 2: Apple_APFS Container disk1 249.8 GB disk0s2 /dev/disk1 (synthesized): #: TYPE NAME SIZE IDENTIFIER 0: APFS Container Scheme - +249.8 GB disk1 Physical Store disk0s2 1: APFS Volume Macintosh HD - Data 32.6 GB disk1s1 2: APFS Volume Preboot 83.6 MB disk1s2 3: APFS Volume Recovery 528.9 MB disk1s3 4: APFS Volume VM 2.1 GB disk1s4 5: APFS Volume Macintosh HD 11.2 GB disk1s5
disk0s1がESPです。disk0s2にAPFSコンテナが作られていて、この中に論理ディスクdisk1があり、その中にCatalina一式が入っています。Macintosh HD – Dataがシステムの中核部分で、簡単には書き換えられないよう保護されています。Macintosh HDがその他のシステムとユーザのデータです。PrebootはFileVault用のボリューム、Recoveryはリカバリーモードで起動するためのボリューム、VMは仮想メモリー用のボリュームです。
アップデートの手順
せっかくのメジャーアップデートなので、現在のM.2 SSDは綺麗さっぱりと全消去して、クリーンインストールしようと思います。なので次の手順でアップデートを進めます。
- disk1のCatalinaでBig Surインストーラをダウンロードする
- USBメモリを用意してBig SurインストールUSBを作る
- USBメモリのESPにdisk1のESPをコピーして起動できるようにする
- USBメモリーからインストーラを起動する
- インストーラからディスクユーティリティを起動し、disk1を消去する
- インストーラからBig Surをdisk1にインストールする
1. Big Surインストーラをダウンロード
Catalinaを起動して、「システム環境設定」「ソフトウェアアップデート」を開いて、Big Surをダウンロードします。12.18GBあるようです。公開直後はネットが混み合ってダウンロード困難だったらしいですが、30分くらいでダウンロードできました。
ダウンロードするといつものように自動的にインストーラが開きます。ここではインストールしないので、インストーラは一旦終了します。
2. Big SurインストールUSBを作る
インストーラ用のUSBメモリを用意します。32GBはあった方が良いです。今回は32GBのUSB 3.0メモリーを用意しました。起動速度がとても遅くなってしまいますがUSB 2.0メモリーの方が確実です。今回は設定済みのESPがあるので問題ありませんが、未知のマザーボードの場合、USBの15個制限の影響で、USB 3.0ポートがUSB 2.0として動いてしまうことがあります。その場合、BIOS起動時は3.0だったポートが、macOSに制御が切り替わった途端に2.0に変貌してしまうので、起動作業が止まってしまうのです。(config.plistで15個制限を外しておくという方法もありますが)
USBメモリをHFS+で初期化する
次に、USBメモリーをディスクユーティリティ.appを使って初期化します。ディスクユーティリティ.appのデフォルトではボリュームのみが表示されますので、まずは、メニューバーの表示から「すべてのデバイスを表示」を選んでおきます。
こうすると、USBメモリ製品名が入ったデバイス名がウィンドウ左側リストに現れますので、これを選択します。今回はJetFlash Transcendという製品名を選択しています。次に消去ボタンを押します。フォーマット方式の項目では、Mac OS拡張(ジャーナリング)とGUIDパーティションマップを選んでおきます。方式をGUIDにしないとESPが作られないです。ここでAPFSを選んでも良さそうな気もしますが、後のcreateinstallmediaコマンドでエラーが出ます。Mac OS拡張(ジャーナリング)を選んでおく必要があります。
次に、Big SurインストーラーをUSBメモリ内に作ります。これは実機(本物のMac)でもBig SurをインストールできるUSBメモリになります。ターミナルを使用して、Big Surインストーラの中のContents/Resourcesに移動して、lsするとcreateinstallmediaというファイルが見つかるはずです。
$ cd /Applications/Install\ macOS\ Big\ Sur.app/Contents/Resources/ $ ls create* createinstallmedia
これを使用して、macOSインストールUSBメモリを作成します。とりあえず起動すると、ヘルプ情報が表示されます。
$ ./createinstallmedia Usage: createinstallmedia --volume <path to volume to convert> Arguments --volume, A path to a volume that can be unmounted and erased to create the install media. --nointeraction, Erase the disk pointed to by volume without prompting for confirmation. --downloadassets, Download on-demand assets that may be required for installation. Example: createinstallmedia --volume /Volumes/Untitled This tool must be run as root.
downloadassetsオプションは、起動用USBメモリを作成する場合に、最新ファームウェアやApple T2チップ用ファームウェアをダウンロードする機能のようです。Hackintoshでは不要な機能なので使わないでおきます。–volumeオプションでは、先ほど作成したUSBメモリへのパスを書いておきます。ということで、以下のコマンドを入力します。
% sudo ./createinstallmedia --volume /Volumes/USB/
sudoしているのでパスワードを求められます。その後、確認を求められるのでyを押します。そうするといろいろ進捗して終了します。
Password: Ready to start. To continue we need to erase the volume at /Volumes/USB. If you wish to continue type (Y) then press return: y Erasing disk: 0%... 10%... 20%... 30%... 100% Copying to disk: 0%... 10%... 20%... 30%... 40%... 50%... 60%... 70%... 80%... 90%... 100% Making disk bootable... Copying boot files... Install media now available at "/Volumes/Install macOS Big Sur"
これでインストール用USBメモリが出来上がりました。本物のMacなら、このUSBメモリで起動するはずです。
3. USBメモリのESPにdisk1のESPをコピーする
こうして作成したインストーラUSBメモリのESPに、稼働しているOpenCore一式をコピーして、USBメモリだけで起動するようにします。それぞれのESPをマウントして、EFIフォルダをファインダーでドラッグ&ドロップすれば良いです。この先、M.2 SSDは消去しますので、他にも必要なデータがありましたらバックアップしておきます。
4. USBメモリーからインストーラを起動する
これで、BIOSからこのUSBドライブを指定して起動すれば、今まで通りOpenCoreが起動して、起動ドライブにBig Surインストーラが見えるはずです。
ただ、OpenCoreでデフォルト通りの設定をしていると、起動ボリュームの一覧にこのUSBメモリが現れないかもしれないです。それはconfig.plistのMisc, Security Properties, ScanPolicyのデフォルト設定が原因です。これのデフォルト値は、0x010F0103 (10進数では17760515) です。この設定だと、2重の理由で、今回のUSBメモリが起動ボリューム候補に現れません。
- まず、USB接続された起動ボリュームをスキャン対象に認める設定が、0x00200000のビットですが、これがデフォルトでは0になっています。なのでUSBデバイスをスキャンしてくれません。
- また、HFS+のボリュームをスキャン対象として認める設定が、0x00000200のビットです。これもデフォルトでは0なので、候補に現れません。
なので、デフォルト値を変えて、ScanPolicyを0x012F0303 (10進数では19858179) に設定します。下の図はProperTreeを使って変更している様子です。
これで起動項目にUSBメモリのインストーラが現れるようになります。Big Surアイコンのボリュームが、USBメモリーです。このInstall macOS Big Surを選択して起動します。
5. インストール先ボリュームを消去する
USBメモリから起動すると、復旧 (Recovery) というアプリケーションが起動します。
Time Machineから復元する、macOS Big Surインストールする、Safari (を開く)、ディスクユーティリティ(を開く)、の選択が可能になります。この他、メニューバーの「ユーティリティ」から、「起動セキュリティユーティリティ」と「ターミナル」が選べます。「起動セキュリティユーティリティ」は、Apple T2チップ用の機能と思われます。hackintoshでは関係ないです。
今回はクリーンインストールを目指すので、Catalinaが入っているdisk 1を消去します。ディスクユーティリティを開き、全てのドライブを表示するようにし、Catalinaが入っているドライブを選択して、消去します。
名前を設定して、フォーマットをAPFSにして、Eraseボタンを押します。これで綺麗さっぱり消去されます。
6. Big Surをインストールする
Disk Utilityを閉じると、またRecoveryのメニューに戻ります。次にInstall macOS Big Surを選択します。するとおなじみのBig Surインストーラが起動します。後は、いつものようにインストールを進めていくだけです。
インストール先のリストには、先ほどフォーマットしたディスクが現れますのでそれを選択します。(ここでもう一つ見えているアイコンはUSBメモリです)
17分くらいでインストールできるそうです。
でも17分も経たないうちに(多分5~6分)、再起動しました。このとき、macOS Installerというドライブが選ばれているはずです。もしも他が選択されていたら、これを選んでおきます。
次は30分程度のようです。
この後、30分も経たないうちに(これも多分5~6分くらい)また再起動しました。またmacOS Installerが選択されてます。
そして数分でまたまた再起動。今度は、インストール先ドライブにつけた名前 (Macintosh HD) の選択肢が現れ、選択されています。これで起動します。
さらに、2~3分で、またまたまた同様に再起動しました。そして次の起動で、設定画面が現れました。
あとはいつものように、設定を行なっていくだけです。
インストール終了したあと、このMacについてを確認すると、バージョンは11.0.1 (20B29) でした。Geekbenchブラウザに出回っている情報によると、M1搭載MacBook Airなどと同じOSが搭載されているようです。
USBメモリのESPの内容を、M.2 SSDの方に書き戻しておけば、SSDで起動するはずです。
まとめ
OpenCoreで起動しているZ490マシンにBig Surをクリーンインストールしました。そのために、単体で起動してBig SurがインストールできるUSBメモリを作りました。以前のバージョンの場合と手順は同じです。ベータ版で予行演習していたこともありますが、スムーズにBig Surに移行できました。