ASRockのZ590 Extreme + 10900KマシンにThunderbolt 4増設カードを取り付けました。これにThunderbolt 3 SSDを接続して動作確認しました。macOS Big Sur 11.4とOpenCore 0.6.9の環境で動かしたところ、hot plugは機能しないものの外付けドライブとして認識されて、M1 MacBook Airと同程度の速度で使用できました。
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HackintoshでThunderbolt
Thunderboltの状況について昔の記事で紹介しました。
本物のMacと同じように機能させるのがHackintoshの目的なので、コミュニティの皆さんは日々ハッキングしています。その結果、ほぼ、本物と遜色ない機能を実現していますが、中にはあまり成功していない機能もあります。その一つが、Thunderboltではないかと思います。Thunderboltはそこそこ動きます。でも完璧ではありません。次のような問題があり、解決できていません。 Hot plugが効かない。起動時に接続されているThunderbolt機器はPCIe接続機器として認識されて機能するけど、起動後に接続した機器は認識されない。 スリープか... ThunderboltとHackintosh - Boot macOS |
現在もあまり変わっていないように思います。hot plugが効かなくても良ければ、つまり起動時に識別されるドライブや機器を使うだけならば、簡単に使用することができます。でもそれ以上の設定を行う場合には、色々と試行錯誤が必要のようです。Thunderboltの初期の頃に、外付けドライブの動作を試したことがありましたが、その時もhot plugは効きませんでした。今回も外付けドライブがとりあえず使えることを目標にします。
Thunderboltの3と4
Thunderbolt 4は、ごく最近、500シリーズチップセットになってから登場した規格です。現行のIntel MacとM1 Macが採用しているのはThunderbolt 3で、4ではありません。なのでmacOSも3だけをサポートしていると考えて良いでしょう。
とはいえ、Thunderbolt 3と4の違いはほとんどありません。最大データ転送速度はどちらも40Gbpsです。Thunderbolt 3の電気特性や仕様にばらつきがあったところを整理したのがThunderbolt 4なのではと理解しています。例えば3では、40Gbpsを実現するケーブル長が0.8mのものもあったところが、4では2mとされてます。また、3では使用するPCIeが2レーンである場合もあったところが、4では4レーンのみになり、32GbpsのPCIe最大データ転送速度が確保されるようです。この結果、PCIe拡張ボックス、Dicplay Port接続などで4レーンの速度が必ず使えるようになってます。
Thunderbolt 3用SSD
Thunderboltの機能を確かめるために、Thunderbolt 3 対応SSDを用意しました。具体的には、以下のThunderbolt 3用SSDケースを用意しました。
AliExpress: Thunderbolt 3 NVMe
少し分厚い (15mm) ですが、革風のエンボス加工がしてあって質感は良いです。内部にはNVMeのM.2 SSDを装着することができ、ヒートシンクも付属しています。搭載されているThunderboltコントローラチップはIntel JHL6540です。
内蔵するSSDは価格コムで安かったPNYのNVMe Gen3 x 4の256GBにしました。今チェックしたら、倍近くに急騰している様子で、あまりお勧めではないかもしれません。パッケージには、読み取り1,700MB/s, 書き込み1,100MB/sと書いてありました。
M1 MacBook Airで動作確認
自作機で試す前に、ちゃんとしたMacでどのように認識されて、速度が出るのかを確認しました。起動しているMacBook Airに接続したところ、hot plugが効いて、Thunderbolt/USB4ハードウェアとして認識されました。
MacもSSDもThunderbolt 3なので、Thunderbolt 3として認識されています。最高速度は40Gbps x 1となってました。ただ、ディスクユーティリティ.appで情報を見るとPCIe接続になっているようです。装置ツリーバスの値を、Hackintool.appの情報と比較したところ、この場所にはPhison Electronics社のPS5013というチップが接続されていました。調べたところ、NVMe SSDをPCIeに接続するコントローラチップで、M.2 SSDに搭載されているチップのようです。
これをAPFSでフォーマットして、AmorphousDiskMarkで測定しました。以下のように、SSDのパッケージに書いてある通りの速度が出ています。
参考までにM1 MacBook Air内蔵のSSDはこの倍くらい高速です。
Thunderboltドライブは取り外し可能ドライブとして認識されています。取り外した後、再度接続すると再認識されてマウントされます。hot plugが完璧に動作していることを確認できました。
(おまけ) Z390のUSB Type Cで使ってみる
MacでのThunderbolt SSDの動作確認ができたので、いよいよhackintoshで試してみます。まずは、Thunderboltの無い自作PCに、Thunderbolt SSDを挿すとどうなるのかを確認しました。使用したのはASUSのZ390マザーボードです。バックパネルにUSB Type Cポートがついていますが、Thunderboltではありません。OpenCore 0.6.9 + macOS Big Sur 11.4の構成です。ここにThunderbolt SSDを接続したところ、しばらくして以下のような通知が出ました。
Thunderboltがついていないので当然の結果ですが、Thunderboltデバイスが接続されたということをmacOSが正しく把握していることが確認できました。
ASRockのTB 4カード
では、いよいよThunderboltハードウェアを搭載したhackintoshで試してみます。使用するマザーボードはASRockのZ590 Extremeです。最近になってASRockからThunderbolt 4 AICカードが発売されてThunderboltがつかえるようになりました。メーカのサイトによると、搭載されているコントローラはIntel JHL8540だそうです。
Intel JHL8540コントローラ搭載。最大40Gbpsの転送速度を実現するThunderbolt 4増設カード ASRock「Thunderbolt 4 AIC」製品情報 - 株式会社アスク |
Thunderbolt 3でよく使われたチップはJHL6x40でファミリー名はAlpine Ridgeでした。JHL8540は、Maple Ridgeというファミリー名だそうです。macOSがサポートしているのはAlpine Ridgeと言われていて、Maple Ridgeがどの程度動くのか未知数です。
カードはPCIe x 4を使用するので、マザーボードの真ん中のPCIe x 16スロット (PCIE3) に挿しました。このソケットは、形状こそx16ですが、マニュアルによると実際にはx4で接続されるようです。ここはチップセット経由のPCIeで、大元のCPUとの接続がx4なので仕方ないですね。Thunderboltカードには十分な仕様です。
カードには、マザーボードに接続するケーブルが2本付属しています。1本はPCIE3ソケットにすぐ隣にあるThunderbolt ACIコネクタへ接続します。5ピンでケーブルも太いので、おそらくは電源強化用ですね。Type CのPD (Power Delivery) に対応するための強化策だと思います。もう1本のケーブルは、マザーボード上のUSB 2.0ピンに接続します。Type CにはUSB 2.0を一本用意しないといけないので、その接続用だと思います。
カード背面には2個のType CコネクタとDisplay Portコネクタがついています。DPの方は入力用で、グラフィックスカードなどに接続します。Type Cコネクタにディスプレイを接続する場合に使用します。今回は接続しませんでした。
BIOS設定
次に、Thunderboltが動くようにBIOS設定します。BIOS設定のAdvanced –> Intel Thunderbolt –> Decrete Thunderbolt SupportをEnabledにします。デフォルトではDisabledになっています。
Thunderboltを有効にすると、
- Thunderbolt Boot Support
- Thunderbolt USB Support
- Windows 10 Thunderbolt support
の項目が現れます。最初の2個は、接続したThunderboltまたはUSBドライブからbootするようにするかどうかの設定です。3番目はWindowsでの設定のようです。とりあえず全部Disabledで良いようです。
また、Thunderboltを有効にすると、自動的に PCI Express Native Controlという項目がEnabledに設定されます。この項目のデフォルト設定はDisabledです。何か必要な設定だと思いますので、そのままEnabledにしておきました。
自作PC+macOSでTBの動作確認
以上でインストールと設定は終了です。Thunderbolt端子に、先に紹介したThunderbolt M.2 SSDを接続し、OpenCore 0.6.9でmacOS Big Sur 11.4を起動させました。その結果、リムーバルドライブとして認識されました。ただしhot plugは効いていないようで、起動時にSSDが接続されている場合しか認識されず、一旦アンマウントすると再接続しても認識されません。
ディスクユーティリティ.appで情報を調べると以下のようでした。実機のMacと同様に、SSDはPCI-Express経由で接続されたドライブとして見えています。
装置ツリーバスの値を、Hackintool.appの情報と比較したところ、実際のMacと同様に、この場所にはPhison Electronics社のPS5013が接続されていました。ここまでは、SSDが実機とほとんど同じように見えているのですが、システム情報のThunderboltの項目を見ると、ハードウェアが見つかりませんとの表示です。
この先、頑張れば、hot plugも効くように調整できるのかもしれません。でも、大昔にThunderboltを試した時も、同様にhot plugが効かず、Thunderboltハードウェアの認識もされませんでした。なので、hot plugの制約を乗り越えるのは難しいかもしれません。Thunderboltはそこまで必要と感じていないので、今回はここまでとしました。
最後に性能のチェックです。Z590マシンにこのSSDを取り付けた状態で、AmorphousDiskMarkで測定しました。なんとM1 MacBook Airの結果とほとんど同じ結果が出ました。ということで、hot plugは効かないものの、実際のMacでのThunderbolt 3接続と同等の性能が出ていることを確認できました。
(おまけ)TB 4 AICをUSBで使う
ASRockのThunderbolt 4 AICにUSB Type-CのUSB 3.1メモリを挿してみたところ、マウントされて認識されました。ThunderboltとしてだけではなくUSBとしても使えるようです。USBとして使う場合は、hot plugが効きました。
まとめ
ASRock Z590 Extremeマザーボードに、ASRockのThunderbolt 4 AICを追加して動作を確認しました。ソフトウェア環境はOpenCore 0.6.9とBig Sur 11.4です。Thunderbolt 3 SSDを接続したところ、hot plugは効かないものの実機のMacと同じ転送速度が達成されていることを確認しました。