Hackintoshを使っていて、Bluetoothキーボードからの入力が途切れたり、逆にキー入力が連打状態になって誤った入力がされたりする経験がありました。Bluetoothのマウスやトラックパッドの入力が不安定になって、ポインターが飛び飛びに移動することもありました。Hackintoshをしていると、どんな不具合でもHackintoshのせいだと思いがちですが、そうでは無いことも多いです。この不具合は以下のようにして解決しましたが、その経緯からしてBluetoothの電波状況が問題だったようです。
Bluetoothは、古い世代のWiFiと同じく2.4GHz帯の無線を使っています。2.4GHz帯は、色々な用途に使われているので影響も受けやすいです。特に問題なのが電子レンジです。加熱のために強力な2.4GHz帯電波を使用しますので、電子レンジが稼働すると、BluetoothやWiFiが不調になることが多いです。また、高速になったUSB 3.0が2.4GHz帯に近いノイズを発生することがあり、シールドが不十分なUSB機器やケーブルが原因で、Bluetooth/WiFiが不調になることがあります。最新のWiFi機器なら5GHz帯の電波を利用することで、これらの問題は回避できます。でも、2.4GHz帯だけを使用するBluetoothでは別の周波数に逃げることができません。WiFiとBluetoothでは電波強度も違います。WiFi電波は100mくらいの距離でも到達します。これに対して、もともと近距離の配線を無線化することが目的だったBluetoothは、到達距離が10m程度です。電波出力が弱い事もノイズにも弱い理由です。
Bluetooth接続が不安定なことには、Hackintoshならではの事情もあります。互換性の高いHackintoshを実現するために、Macで使われているのと同じ無線モジュールを使います。こちらで無線モジュールの選び方を解説してあります。
自作PCでは、この無線モジュールを、下のようなPCIeアダプタに載せて、これをPCIeスロットに挿して使うことが一般的です。そうすると、筐体の後ろ側にアンテナを立てて使用することになります。
このような設定だと、机に載せたキーボードやトラックパッドから、筐体のアンテナまでの距離が長くなってしまったり、金属筐体で遮蔽されてしまったりして、電波状況が悪くなることが予想されます。一方で、実際の Mac、例えばiMacでは、画面の周囲にアンテナが配置されているので、机の上のBluetooth機器からの距離は近く、見通しも良いです。
アンテナを机の上に持ってくる
解決方法の一つは、Bluetoothアンテナを机の上に持ってくることです。アンテナをキーボードやトラックパッドに近づければ、安定した無線通信を実現できます。そのために、下のような延長ケーブル付きアンテナ台を使うと良いです。台にはマグネットが入っているので、金属部分に固定することもできます。
まずは、PCIeスロット背面やPCケースのアンテナから、Bluetoothアンテナを外します。例えばBCM94360CDには4本のアンテナがあり、J0, J1, J3, J2の順に印がついています。このうちの端から2番目のJ3(コネクタの切り欠きのある側から2番目に遠いアンテナ)がBluetoothのアンテナで、残りの3本はWiFiです。下の写真では上から2番目のアンテナ端子がBluetooth用です。
他の無線モジュールにも、複数のアンテナ端子が付いていますが、そのうち1本がBluetoothです。どれがBluetoothなのかは、ネットで調べると書いてあることもあります。アンテナを外して感度が下がることで確認しても良いです。
次に、外したコネクタ端子に、上記のアンテナ台の延長ケーブルを接続します。アンテナ台を机の上に置いて、外したアンテナをアンテナ台に接続すれば完了です。この結果、Bluetoothの電波状況が改善したのか、冒頭に書いたようなキーボード、トラックパッドの不具合が一切発生しなくなりました。
上で、iMacは画面上部にBluetoothアンテナがあるから問題発生しにくいと書きましたが、ネット掲示板を見ていると、Bluetoothキーボードやトラックパッドの入力が不安定で困っている人が結構いるようです。特に、画面が大きいiMacではアンテナまでが遠いので、ノイズの多い環境では不安定になることもあるようです。アンテナを延長する方法ならば、キーボード・トラックパッドのすぐ脇にアンテナを置くこともできます。Bluetoothアンテナを延長することは実際のMacでは困難ですので、Hackintoshならではの柔軟性が発揮できる方法かと思います。