普段使いのノートとして古いMacBook無印を使っていたところへ、M1 MacBook Airがやってきました。重いけど速くて使いやすくて気に入りました。使ってみて気づいたところを書き連ねます。
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M1 Mac
M1搭載MacはMac mini, MacBook Air, MacBook Proと3機種出ました。ハードウエア更新がいつも後回しな印象のあるMac miniが、新CPU搭載ラインナップに加わっているのは嬉しかったです。ただ、こんなにスカスカなのに、一切拡張できないのは残念です。メモリーソケットとM.2ソケットをつけて、2.5インチSATAドライブを2台は搭載可能な感じです。
それで注目なのはAirだと思いました。3機種とも同じCPU/GPUで、メモリとSSDの構成も同じです。一切拡張できない点も同じです。ならばM1の小型・省電力という特徴を生かした軽くてファンレスのAirが面白いと考えました。
キーボードが良い
Late 2019 MacBook Proからすでに改良されている点で、今更報告するほどのことではないかと思いますが・・・キーボードが良くなってました。MacBook無印のキーボードは、評判の悪いバタフライ型でした。薄いけど、沈み込みが少なく、ペチペチと安っぽい打鍵音がします。打ちにくさは慣れれば克服できるのですが、打鍵音がうるさいので、周囲に人が居る会議や公共の場で使いにくかったです。薄さを追求したMacBook無印には薄いバタフライ型が必要だったのかもしれないですが、厚いMacBook Proにも使われてました。評判が悪い上に、動作不良になることも多くて、2019年11月からのMacBookシリーズでは、元のシザー型のキーに戻りました。薄いキーを諦めた結果、MacBook無印は終了になってしまいました。
M1 MacBook Airも、改良されたキーを搭載しています。デスクトップ用のApple Magic Keyboardと同じキーになっているそうで、慣れ親しんだいつもの打鍵感覚を得られます。MacBook無印と比べると打鍵音がほとんどしないのがとてもありがたいです。ファンレスで動くM1チップならば、MacBook無印の筐体で薄型軽量なモデルを作って欲しかったと最初は考えていました。実際、無印に比べてAirはずっしりと重いのですが、このキーボードのためなら我慢しても良いと思えました。それくらいキーボードが良いです。
Touch IDが便利
これも目新しいことではないですが、Touch IDが便利でした。Windowsノートには指紋デバイスが、はるか昔から搭載されてました。MacBookシリーズにも2016年のTouch Barから搭載されてます。なので単に疎かっただっただけなのですが、使ってみたら便利でした。Apple Watchで認証するには、装着していないと使えません。指紋ならいつでも対応できます。デスクトップ向けのMagic KeyboardにもTouch IDをつけてくれたら良いのにと思いました。
CPUとGPUが速い
省電力で小型軽量マシン向けのCPUだと思われていたところが、ベンチマークのスコアが予想以上に高くて、評判になってます。ここでは、デスクトップの自作macOSマシンと、改めて比較しました。構成はASUS Z490-G + 10900K + RX-5700XT + OpenCore 0.6.4 + Big Surです。まずはGeekbench 5のCPUスコアの比較です。シングルコアはM1が優ってます。マルチコアの結果も、4+4物理コア 対 10物理コア+10HTの対決にしては、M1は頑張っています。省電力物理コアは、インテルのHTによる仮想コアよりも仕事が出来る感じです。グラフィックスの性能は冷却もしっかり効いたdGPUに敵いませんが、IntelのiGPUに比べたら高性能です。
M1 MacBook Air | 自作 macOS | |
CPU | M1 | 10900K |
GPU | M1 | RX-5700XT |
メモリ/SSD | 8GB/256GB | 32GB/250GB |
CPU シングル | 1,714 | 1,335 |
CPU マルチ | 7,394 | 11,041 |
GPU OpenCL | 16,701 | 66,296 |
GPU Metal | 18,727 | 69,797 |
Cinebench R23も試しました。デフォルトでは10分間の試験をすることになってますが、時間がかかるので1回だけ走らせました。10分間テストを実施したらファンレスのMacBook Airはスコアが下がったかもしれません。アクティビティモニターによるCPU稼働率も一緒に示します。M1では、高性能コアも省電力コアもどちらもしっかり仕事をしている印象です。省電力コアが足を引っ張るような振る舞いは見られませんでした。
こちらは10900Kの様子です。
スコアは、以下のようです。GeekbenchのCPUマルチのスコアよりは差が開きました。でも、ローエンドMacに搭載された省電力CPUとしては、今までにない高性能です。
M1 MacBook Air | 自作 macOS | |
Cinebench R23 | 7,063 | 16,230 |
SSDの速度をAmorphousDiskMarkで測定しました。時間がかかるのでこれも最初の項目だけのテストです。M1 MacBook Airも自作PCもどちらも250GBなので、SSDの性能は同じようなものだと思います。後述するように、M1は接続がApple Fabricです。スコアは以下のようでした。
こちらはASUSマザーボード上のM.2ソケットに取り付けたWDの250GB SSDの速度です。M.2 SSDの方がWriteは遅かったですが、Readは同程度でした。接続方式の違いではなく、SSDの特性の違いと思われます。
iOSアプリが使える
M1チップのMacではiOSアプリが使えます。App Storeで検索するときに、「iPhone および iPad App」を選ぶとiOSのアプリが出てきます。これを見ると、iOSのアプリのかなりがM1 macOSで動作するようです。キャッシュレス決済アプリを入れておけば、スマホを忘れても、MacBookさえ持っていればコンビニで買い物ができます。画面上部のカメラも起動できるので、店頭QRコード支払いも可能なようです。このほかiPhoneで使っていたタイマーアプリ、Wi-Fi接続家電のリモコン、電卓などをダウンロードして使えました。
謎アーキテクチャの探索が楽しい
今回のMac新モデルで一番楽しい点は、Apple Siliconという新しいアーキテクチャを探索できるところです。謎なところをいくつか探ってみました。もし詳しい情報をご存知の方がいらしたら、教えていただければと思います。まずは、Z490マシンでmacOSのCPU名を調べるコマンドを打ち込むと、
% sysctl -n machdep.cpu.brand_string Intel(R) Core(TM) i9-10900K CPU @ 3.70GHz
のように、詳しい名前やクロック数が表示されていました。M1 MacBook Airでこのコマンドを打つと、こんな表示になります。
% sysctl -n machdep.cpu.brand_string Apple processor
そっけなくて、詳細な仕様を謎のままにしておきたいという意図を感じます。
unameコマンドでは、OSの名前を表示できます。インテル版のBig Surで実行すると以下のような表示が出ます。
% uname -a Darwin chimney.local 20.1.0 Darwin Kernel Version 20.1.0: Sat Oct 31 00:07:11 PDT 2020; root:xnu-7195.50.7~2/RELEASE_X86_64 x86_64
X86 64のためのリリースだと書いてあります。M1 MacBook Airでこのコマンドを打つと、以下のように表示されました。
% uname -a Darwin air2020.local 20.1.0 Darwin Kernel Version 20.1.0: Sat Oct 31 00:07:10 PDT 2020; root:xnu-7195.50.7~2/RELEASE_ARM64_T8101 arm64
ARM64アーキテクチャの、ARM64 T8101のためのリリースとのことです。T8101をネットで検索してみたら、iPhone 12シリーズに搭載されているApple A14 Bionic SoCの型番だそうです。M1チップは、A14に非常に近い仕様なのではと想像できます。
Z490マザーボードのM.2ソケットに取り付けたSSDをディスクユーティリティで見ると以下のようでした。名前の説明に「PCI-Express内蔵物理ディスク」となっていて、PCI-Express接続になってます。
M.2ソケットにはPCIeの配線がつながっていて、SSDはそれに接続しているので当然の表示です。一方、M1 MacBook AirのSSDを、同様にディスクユーティリティで調べてみます。すると、名前の説明が「Apple Fabric内蔵物理ディスク」になり、接続先がApple Fabricになってます。このSSDはPCI-Expressとは違った接続のようです。
「システム環境」のSSDの項目にもApple Fabricの記述があります。Appleのサイトの図によると、FabricとはCPU, GPU, メモリーなどが接続されている内部バスのようなものらしいです。ここにSSDが接続されているようです。PCIeは無くなってしまったのでしょうか?
HackintoolやIORegistryExplorerなどで調べると、一応はPCIeらしきものの一覧が出てきます。また、Display controllerとしてAMDのRadeon R7 370 / R9 270X/370XがPCIeの一覧に見えます。
でもどのDevice Pathも0番になっていて、怪しい感じです。Systemのタブを見ると、CPUは2.50GHzのVirtualAppleとなってます。
同様の情報は、MacCPUIDを動かしても得られました。やはりVirtualAppleという名前のCPUになってます。アーキテクチャはWestmereという太古のインテルCPUの設定です。おそらくは、Hackintoolに表示されている情報の、Intel Generationが???になっている部分を、Westmereと判断したのだと思います。
Hackintoolを動かす前にRosetta 2をインストールしてくださいというダイアログが出てました。なので、これらの情報は、Rosetta 2が提供しているフェイクな情報ではないかと思います。Intel版macOSアプリを動かすために、Apple SiliconアーキテクチャをIntelアーキテクチャに偽装しているとしたら、これはhackintoshに通じるテクニックだと思います。
まとめ
新しいM1 MacBook Airを使ってみました。今まで使っていたMacBook無印と比べると重量が重くなりましたが、動作は軽く、キーボード、Touch ID、iOSアプリが使えて便利です。Appleオリジナルの新しいCPUになったので、今までと違う内部情報が得られました。