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5.25インチベイに取り付ける取り外し可能なHDDケース
今のMacintosh製品には5.25インチベイが無いです。最近の自作PCケースも、5.25インチベイの無い製品が増えていますが、あれば色々便利です。中でも、簡単に5.25/2.5インチドライブを取り付け・取り外しできるリムーバブルディスクケースは便利だと思います。自作していれば、小容量の古いHDD/SSDが余ってしまいがちです。それが簡単に取り付けられるリームバブルケースがあれば、大容量のデータを高速にコピーして持ち運ぶとか、新しいバージョンのOSを実験的にインストールするとか、いろいろな場面で便利に使えます。
市販の製品
5.25インチベイ自体が廃れ始めているので、製品もひところに比べたら少ないですが、いくつかあるようです。5.25インチと2.5インチの両方が入る製品が多いようです。隙間にUSBコネクタを装備している製品とか、光学ドライブも入れられる製品もあります。ちなみに、大は小を兼ねるので、5.25インチが一台だけしか入らないケースも、工夫すれば2.5インチもなんとかなります。
HDD/SSDのSATAコネクタは、なんども抜き差しする前提で設計されていないので、壊れやすいと言われています。ちゃんとしたサーバで使うホットプラグケースでは、強度の高いコネクタ付きトレイを用意してHDDをネジ止めする構造になっています。でも、素人がちょっとした実験で抜き差しするくらいなら、全然問題ありません。ねじ止めしなくても取り付けられるケースが楽です。
またこれらの製品は、ホットプラグ対応を謳っています。電源を入れたまま、HDD/SSDを抜き差しできるという意味です。ただし、これは電気的に問題を起こさないという意味であって、マウントしたままいきなり取り外すと当然ですがデータが損傷する可能性があります。非マウント状態にしてから抜き差しする必要があります。
ホットプラグなドライブアイコン
ドライブはmacOSでいろいろなアイコンで表示されます。一般的なHDD/SSDは銀色のアイコンです。ちょっと古い感じのハードディスクの形です。USBメモリーは白いアイコンで表示されます。スリットがあるので、光学ドライブの絵なのかもしれません。また、取り外し可能なHDDなどはオレンジ色のアイコンで表示されます。取り外し可能なドライイブアイコンの隣には、イジェクトアイコンが表示されていて、これを押すとアンマウントされます。
上で紹介したリムーバブルケースは、取り外し可能なディスクなので、イジェクトマークのあるアイコンになるべきです。でも、USB接続と違い、リムーバブルケースからマザーボードへは内蔵ドライブと同じSATAケーブルで接続します。マザーボードから見たら、SATAコネクタが内部のHDDに接続されているか、もしくはリムーバブルHDDケースに接続されているのかの区別はつきません。人手で指定する必要があります。
いくつかのマザーボードではデフォルト設定として、インテルのチップセットに接続されたドライブを内部ドライブ(銀色アイコン)にしています。一方で、チップセットのSATAに加えて追加SATAチップを搭載して、SATAの数を増やしている場合、追加のSATAチップに接続はリムーバルボリュームに設定されていることが一般的です。でも全てをホットプラグ対象とみなすマザーボードも中にはあります。こうした割り当てで、内蔵ドライブがオレンジ色のアイコンになってしまうことがあります。それが嫌な人のために、 AHCI_3rdParty_eSATA.kext や AHCI_Intel_Generic_SATA.kext といったkextが用意されていました。これらのkextの主な目的は、オレンジ色のアイコンを銀色に戻すことです。ただ、これらのkextは最近のmacOSでは機能しないことが多いので、あまり使われなくなりました。
BIOSでホットプラグと設定
マザーボード搭載のSATAに接続したドライブがリムーバブル(ホットプラグ)なのかどうかは、BIOS設定で指定します。下はMSIのマザーボードの例です。
この機能で、それぞれのSATAコネクタに接続されているドライブが、固定ドライブなのか、ホットプラグさせるドライブなのかを設定します。これが一番理想的ですね。この方式ならば、オレンジアイコンの割り当てを正しく行うことができます。ただし、後述するように、BIOSでホットプラグに設定しても、macOSで必ずしもオレンジアイコン表示にはならない場合もあるようです。
なお銀色アイコンで、イジェクトマークがついていないドライブでも、ゴミ箱方向へドラッグ&ドロップすればアンマウントできます。また、ディスクユーティリティを使ってもアンマウントできます。ターミナルから、diskutil unmount /dev/disk… としてもアンマウントできます。
ただ、銀色アイコンとして認識されているSATAドライブは、起動時に接続されていなければ認識されません。macOS起動後に接続しても認識されません。また、起動時に接続されてマウントされても、その後で一旦アンマウントしたら、もう一度接続しても認識されません。なので、リムーバブルケースで接続する場合は、オレンジ色のアイコンで認識されないととても不便です。
macOSでホットプラグ
BIOSレベルでホットプラグに設定しても、macOSでオレンジアイコンにならない場合があります。銀色アイコンの状態では、起動時にはマウントしますが、ホットプラグによりマウントしてくれない状態になります。SATAチップの種類、マザーボード、macOSのバージョンなどで対応が異なるようです。
Z97マザーボード+Sierra以前
この記事を最初に書いた時点では、MSIのZ97チップセットマザーボードでSierraで動かしていました。BIOSのホットプラグ設定をすると、macOSでもオレンジアイコンになりホットプラグでマウントされ、安定に動作していました。
Z97マザーボード+High Sierra以降
不安定です。High Sierraになった時点で、BIOSで設定しても銀色アイコンのままのこともあり、動くこともあるようです。ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (Z390)マザーボード+Catalinaの組み合わせでは、BIOS設定のホットプラグが正しくオレンジアイコンに表示されることも何度かありました。その時は、スリープしても問題ありません。でも何度も起動して確認すると、マウントされないこともあります。
PCIe拡張SATAカード + Catalina
以前、macOSと互換性のあるPCIe拡張SATAカードをご紹介しました。
SATAポートをASM1061搭載の格安PCIe拡張カードを使って増設しました。macOSから見たSATAチップの互換性は高いようで、大抵の拡張カードはそのまま「一般的なSATA」として認識されて動作します。減少するSATAポートマザーボードに搭載されているSATAポートの数が減っています。HDDの容量が増えたので、5.25インチのHDDを多数搭載する人が減ったためかもしれないです。光学ドライブも使われなくなりました。高速SSDはM.2でPCIeに直接接続するようになりました。このような理由なのか、従来のフルサイズマザーボードにはSATAが8本くらい搭... PCIe拡張カードでSATAを増設する - Boot macOS |
追記:以下の方法では、マウントする際にBig Surが落ちることがありました。後述する長いパターンのパッチを当ててください。ASMediaやMarvellのチップでもホットプラグ可能です。
これらのカードの場合、こちらで紹介されているように、
Find --> 40600200 Replace --> 00000000 AppleAHCIPort
というパッチを当てれば、ASMediaやMarvellのチップでホットスワップできるようです。元のサイトの説明では、SATAポートデュプリケータの不具合に対応するパッチらしいですが、ホットプラグ問題も解決するようです。具体的には、config.plistに
<key>KextsToPatch</key> <array> <dict> <key>Comment</key> <string>ALPM IO Error AppleAHCIPort</string> <key>Disabled</key> <false/> <key>Find</key> <data>QGACAA==</data> <key>InfoPlistPatch</key> <false/> <key>Name</key> <string>AppleAHCIPort</string> <key>Replace</key> <data>AAAAAA==</data> </dict> </array>
を追加します。QGACAA==が40600200で、AAAAAA==は00000000です。これでホットスワップが動くようになり、スリープしても大丈夫でした。Marvell 88SE9230チップセットによるカードと、ASMedia ASM1061チップセットカードの両方で動作を確認しました。
Z390 + Catalinaのパッチ
コメントでまっくぷろさんからいただいた情報によると、こちらで紹介されているパッチもしくはその変形を使うと、Z390チップセットのSATAをホットプラグ対応にできるようです。
Find --> 89C82540 6002003D 40200000 750C81E1 BF7FFFFF 898B5101 0000 Replace --> 90909090 90909090 90909090 90909090 90909090 90909090 9090 AppleAHCIPort
または、
Find --> 81E24060 020081FA 40200000 750C81E1 BF7FFFFF 898B6901 0000 Replace --> 90909090 90909090 90909090 90909090 90909090 90909090 9090 AppleAHCIPort
のようです。これに対するBase64文字列を、上で紹介したように、config.plistのKextsToPatchセクションに書き込んでおけば良いようです。
このパッチのいずれでも動かないようでしたら(もしくは将来のmacOSバージョンで動かなくなったら)、AppleAHCIPort.kext/Contents/MacOS/AppleAHCIPortをバイナリーサーチして40200000を検索して、その前後から上記のようなパッチを作れば良いようです。例えば以下のようにします。10.15.3での実施例です。まずはバイナリーをhexdumpしました。
hexdump /System/Library/Extensions/AppleAHCIPort.kext/Contents/MacOS/AppleAHCIPort | less
lessの中で、サーチコマンド
/40 20 00 00
をタイプし、40 20 00 00を探します。
00029a0 73 0e 81 ca 40 80 00 00 89 d1 89 93 69 01 00 00 00029b0 89 ca 81 e2 40 60 02 00 81 fa 40 20 00 00 75 0c 00029c0 81 e1 bf 7f ff ff 89 8b 69 01 00 00 f6 c1 40 74 00029d0 7e 3d 09 01 01 00 72 77 44 89 fa c1 ea 0a 81 e2
この方法では、運悪く改行にかかっているとデータ列が見つからない可能性はありますが、首尾よく発見できました。他には存在していないようです。ということで、まっくぷろさんの情報と同じく、40 20 00 00を挟んだデータ列をNOP (90) に置き換える
Find --> 81E24060 020081FA 40200000 750C81E1 BF7FFFFF 898B6901 0000 Replace --> 90909090 90909090 90909090 90909090 90909090 90909090 9090 AppleAHCIPort
というパッチで良いようです。base 64に変換します。詳しくはこちらをご覧ください。
echo -n "\x81\xE2\x40\x60\x02\x00\x81\xFA\x40\x20\x00\x00\x75\x0C\x81\xE1\xBF\x7F\xFF\xFF\x89\x8B\x69\x01\x00\x00" | base64 geJAYAIAgfpAIAAAdQyB4b9///+Ji2kBAAA=
ちなみにNOPコマンド列である9090…の方は、
echo -n "\x90\x90\x90\x90\x90\x90\x90\x90\x90\x90\x90\x90\x90\x90\x90\x90\x90\x90\x90\x90\x90\x90\x90\x90\x90\x90" | base64 kJCQkJCQkJCQkJCQkJCQkJCQkJCQkJCQkJA=
です。なのでconfig.plistには
<key>KextsToPatch</key> <array> <dict> <key>Comment</key> <string>Enables hot plug for removal drives</string> <key>Disabled</key> <false/> <key>Find</key> <data>geJAYAIAgfpAIAAAdQyB4b9///+Ji2kBAAA=</data> <key>InfoPlistPatch</key> <false/> <key>Name</key> <string>AppleAHCIPort</string> <key>Replace</key> <data>kJCQkJCQkJCQkJCQkJCQkJCQkJCQkJCQkJA=</data> </dict> </array>
を追加します。これでBIOSでホットスワップ指定したチップセットSATA接続ドライブがオレンジ色アイコンになり、随時マウント・アンマウントできるようになりました。またスリープしても問題ありませんでした。
つづき
上記のパッチをOpenCoreのconfig.plistで当てる方法を以下で紹介しました。
また、Big Sur対応のパッチを以下で紹介しました。
結論
ホットプラグできるリムーバブルベイは便利です。チップセットSATAの場合は、BIOSでホットプラグを設定します。それでもmacOSにホットプラグ対応と認識されない場合は、AppleAHCIPort.kextにconfig.plistでパッチを当てます。手元の環境 (ASUS Z390 + Catalina) では、MarvellのSATA拡張カードを使っているので、拡張カード用のパッチを当てることにしました。