ASUSのZ490マザーボードROG STRIX Z490-G GAMING (Wi-Fi) のIntel製WiFi/BTモジュールをBroadcom製のBCM94360NGに交換しました。ただZ490から無線用M.2ソケットがCNVi専用になってしまいました。それでSSD用のM.2ソケットに、M Key, E Key変換M.2カードを使用して取り付けました。
Table of Contents
デスクトップでE Key M.2を使う
macOSで使えるWiFi/Bluetoothモジュールは、こちらの記事で紹介してあります。
Hackintosh自作に適したWiFiとBluetoothカードを紹介します。今までお話しした、CPU、マザーボード、グラフィックスカードがHackintosh自作パーツの主役でした。これらが正しく選択されていれば、他のパーツはどれを使ってもとりあえず動きます。でも脇役なりにこだわっておきたいパーツもあります。WiFi / Bluetoothカードはその筆頭かと思います。結論長いので、結論を先に書いておきます。現時点 (2020/7) で、比較的入手可能なモジュールで、そのままで (OOBで) 使用できる製品は、以下です。 BCM94360CS2 (Broadcom独自コネクタ)... Hackintoshのパーツ選び 【その4:無線編】 - Boot macOS |
通常は、デスクトップマシンならPCIeスロット、ノートPCやミニPCならばM.2コネクタを使用して無線モジュールを取り付けるのが一般的です。とはいえ、デスクトップ構成でもPCIeスロットが使えない、もしくは温存しておきたい場合があります。特にmini ITXマザーボードにはPCIeが1本しかありません。これをmacOSでほぼ必須のグラフィックスボードに使用してしまうと、無線モジュール用のPCIeスロットがなくなってしまいます。その場合、M.2ソケットが空いていれば、それに無線モジュールを取り付けられます。
非CNViにも対応したマザボ
市販のWiFi機能搭載マザーボードには、M.2ソケット方のWiFi/Bluetooth無線モジュールが搭載されています。バックパネルのところにアンテナ端子が用意されていますが、その内側にシールドされた金属箱がある場合が多いです。この中に、M.2ソケットと無線モジュールが入っています。最近のかっこいいバックパネルカバーのついたマザボも、裏側のネジを外せばカバーが外れて、コネクタ部品が見えるようになります。
なお、このシールド箱内部のM.2ソケットは、SSDを接続するM Key M.2ソケットとは違い、E Key M.2ソケットと言うタイプです。M KeyがPCIeを4レーン持っているのに対して、E Keyは2レーンで、その代わりにUSBなどを備えています。Bluetooth機能はE KeyのUSBを利用しています。
- M Key M.2 : PCIe x 4
- E Key M.2 : PCIe x 2, USB ほか
シールド箱は、マザーボード裏側のネジを外すと取り外せます。取り外すと中にはE Key M.2無線モジュールがあり、マザーボードのM.2ソケットに挿さっています。
Z370世代までのWiFi搭載マザーボードでは、このE Key M.2ソケットに通常のPCIe/USB接続のM.2無線カードが取り付けられていました。Z390世代になって、インテルチップセットにWiFiサポート機能が搭載されていて、それと連携するインテル統合接続 (CNVi) という仕組みが用意されました。これは、WiFiのMAC層をチップセットで担当して、信号処理や無線の物理層をM.2カードで担当します。でもZ390では従来型の非CNVi方式M.2無線カードも引き続きサポートされていました。なので、Z390世代より前のマザーボードなら、以下の方法で、macOSと互換性のあるBCM94360NGに交換できます。
この金属シールドは、さらにネジ1個を外すと開けられます。これで、中の無線モジュールをBCM94360NGに交換し、macOSで使用できます。
Z490マザボの大半はCNVi限定
ところがZ490になって、多くの無線搭載マザーボードのE Key M.2ソケットが、インテルCNViに対応した無線モジュール専用になってしまいました。前回、ASUS ROG STRIX Z490-G GAMING (Wi-Fi)にmacOSをインストールしました。
Intel第10世代デスクトップCPU 10600を搭載したASUSのZ490マザーボードに、OpecCoreで起動するmacOS Catalinaをインストールしました。とりあえずは動く状況です。CPU, iGPU, スリープは動いていますが、オンボードのEthernet, サウンドがまだ動きません。参考にしたページSchmockLoadさんが、GIGABYTE Z490 Vision Dにインストールした様子をGitHubにまとめてくれていたので最初はこれを参考にしていました。でも作業を進めているうちに、OpenCoreが0.5.9になり、ガイドのページも更新されて、なんとComet Lake-S用のconfig.plistを作... Comet Lake-S 10600とZ490でmacOSを動かす - Boot macOS |
このマザーボードも、バックパネルのシールド内コネクタは引き続きE Key M.2ですが、従来型のM.2無線カードが動きません。ASUS ROG STRIX Z490-G GAMINGには、少し安価なWiFi無しのモデルもあります。あえてWiFiモデルを入手したのは、もしかしたらBCM94360NGが使えるかもしれないと思ったからです。でも、残念ながらE Key M.2ソケットはCNVi専用でした。SchmockLordさんのGitHubにも「使えません、信じてください」と書いてありました。実は上に掲載した写真は、このマザーボードでも、もしかしたら動くのではと思いつつ、作業した際の写真でした。
Z490でも非CNViに対応するマザボ
Z490でも従来型の非CMVi無線カードが使える製品もあります。これならば、上記で紹介した手順で、Broadcom製のBCM94360NGに交換可能です。IEEE802.11a/b/g/n/ac/axのWi-Fiは、新しいのでこれに対応したZ490マザーボードは恐らくCNVi専用と思われます。一方で、IEEE802.11a/b/g/n/acのみのZ490マザーボードらな、非CNViの可能性があります。例えば以下の製品はIEEE802.11a/b/g/n/ac対応なので、使えるかもしれません。
SSD用M.2に無線を取り付ける
今回はmicro ATXなので、PCIeスロットにも余裕があり、そちらにWiFi/BTカードを挿しても良かったです。でもせっかく割高のWiFiモデルなので、そのアンテナ穴を生かすことにしました。そこで、SSD用のM Key M.2ソケットを使うことにしました。このマザーボードは、SSD用のM.2ソケットが2個あります。1個しか使わない予定なので、余りを活用しようと考えました。
長いアンテナケーブル
バックパネルのアンテナ穴から、SSD用M.2まで配線するために、長めのアンテナケーブルを手配しました。バックパネルのコネクタの形状は、PR-SMA femaleと言うらしいです。見た目はmaleなのですが、名前はfemaleです。また、モジュールと接続する方の小さなコネクタにも種類があります。U.FLとかMHF4とかの名前のコネクタがBCM94360NGに適合します。ややこしいので、販売サイトの写真と実物を比較して確認するのが良いと思います。ケーブル長さは、30 cmを手配しましたが少し長すぎました。下のような20 cm長で十分でした。
M Key – E Key変換
マザーボード上のSSD用M.2ソケットに無線モジュールを装着する際に2つの選択肢があります。一つは、SSD用ソケットをBroadcom専用ソケットに変換して、純正のBCM94360CDなどを使う方法です。もう一つは、E Key M.2に変換してBCM94360NGを使う方法です。前者は、互換性としては安心ですが、変換器が少し特殊です。後者は、これもOOBで動き十分互換性が高い上に、一般的なM.2同士の変換なので変換器が容易に入手できます。今回は後者のE Key変換を行うことにしました。また、バックパネルのアンテナ穴が2個しかないので、同じアンテナ数2個のBCM94360NGで十分とも考えました。用意した変換器は、下のような製品です。
A KeyにはUSBがありますが、M Keyにはありません。そこで、アダプタには白いUSB用コネクタが付いています。付属のケーブルでマザーボードのUSB 2.0ピンヘッダに接続します。
取り付けと配線
実際に取り付け、配線を行った様子です。
バックパネルシールドからアンテナ端子を取り外して、長いアンテナケーブルの端子を取り付けます。アンテナ取り付け・取り外しで緩むことがないよう、ボックスレンチで締めておきました。ここからアンテナ線をM.2 SSDソケットまで引き回します。30cmと長すぎたので、CPU側のPCIeスロットを大回りして配線しました。USB 2.0のケーブルも長すぎたので、こちらもPCIeスロットを大きく迂回して配線しました。アダプタ上のUSBコネクタは、基板の端にあるので、ケーブルが隣のM.2 SSD用ヒートシンクに多少干渉します。でもケーブルを強く曲げておけばなんとか回避できます。バックパネルアンテナ端子のシールドは外したままですが、バックパネル端子カバーを取り付ければ見えなくなり、不自然さはありません。
まとめ
WiFi搭載マザーボードのインテルモジュールを外して、macOS互換無線モジュールを取り付けました。バックパネル部分のE Key M.2がCNVi専用だったので、M.2 SSD用のソケットを使い、そこにBCM94360NGを取り付けました。これにより、macOSの無線関連機能がOOBで動作しました。
400シリーズチップセットでも、一般的なM.2無線モジュールがバックパネルのM.2ソケットに取り付けられる製品もあるようです。WiFiの仕様が、802.11 a/b/g/n/ac/axとなっているマザーボードはおそらくCNVi専用で、802.11a/b/g/n/acとされているマザーボードはCNVi以外も動作する可能性があるようです。Redditの情報によるとA Sock Z490M-ITX/acなどはBCM94360NGが使えるらしいです。
追記:コメントで教えていただきましたが、ASRock Z490M-ITX/acでBCM94360NGが動いたそうです。その一方で、Z390でも、GIGABYTE Z390I AORUS PRO Wi-FiはCNVi専用だったようです。