Catalinaで導入されたSidecar機能が無線接続で使えました。使用したWiFi/BluetoothモジュールはBCM94360CDとFenvi T919です。どちらも最初は有線でのみ動作してましたが、うやむやのうちに無線でも動くようになりました。
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Sidecar動作のための条件
Sidecarを使うと、iPadがmacOSマシンのセカンドディスプレイになります。ミラーリングもできます。またiPad側のApple Pencil操作で、macOS画面を操作できます。でもSidecarを動かすためには、いくつかの条件が必要なようです。必要そうな条件を以下にあげました。Hackintoshでは、この条件は間違っているかもしれませんし、今後のアップル社の対応で変わってくるかもしれません。
Apple IDと無線
実機のMacでは、macOSマシンとiPadが
- 同じApple IDでログインしていること、
- 同じWiFiに接続していること(有線LANでは駄目です)、
- Bluetoothの到達範囲にあること、
がSidecarを使う条件だと言われています。もちろんHackintoshでも必要条件です。USBケーブルでSidecarする場合には、無線条件が満たされていなくても大丈夫のようです。
iGPUの条件
試したところでは、BIOSレベルでiGPUが機能していることが必要のようでした。macOSからiGPUが認識されている必要はないようです。なのでグラフィックスカードを使用しているマシンでも問題ありません。BIOSからiGPUを無効にしていると、Sidecarで接続はしても画面が暗いままです。おそらくは、iGPUの画像圧縮機能を使って、画面を転送しているので、それがないと表示されないのだと思われます。後述するようにBIOS設定でiGPUがマルチモニターで動くように設定します。
追記:コメントでは、iGPUの無いXシリーズCPUでも動いたという情報をいただきました。
T2チップ搭載の機種IDは使えない
コメントでいただきましたが、tonymacx86の情報によると、T2チップ搭載機種IDを使ったHackintoshではSidecarは動かないらしいです。T2チップ搭載モデルでは、Sidecarの認証または画面圧縮にT2チップを使っているのだと思われます。なので、以下のページで示された機種IDを使用している場合は、Sidecarは使えません。
Apple T2 セキュリティチップ搭載モデルの Mac コンピュータについて説明します。 Apple T2 セキュリティチップ搭載モデルの Mac - Apple Support |
BCM94360CDで動かす
最初は、Z390+9900Kを搭載したマシンでSidecarを試した経緯を書いておきます。このマシンのパーツ構成、ESP構成、config.plistなどは、下のリンクを見てください。
Coffee Lake-S Refreshの作例です。スリープ、iMessage、FaceTimeが機能します。純正無線ユニットを使用しているのでContinuity関連も問題ありません。過去に公開した記事のまとめです。このマシンは常用していますので、ここで紹介している作例で一番自信のある構成です。macOS 10.15.3に対応したEFIフォルダの中身をこちらに置いておきます。シリアル番号とUUIDは有効ですが、ネット接続する前に必ず変更してください。ハードウェア マザーボードはASUS ROG MAXIMUS HERO WIFI (国内ではWiFi付モデルのみのようです。WiFi/BTは動作... ASUS ROG MAXIMUS XI HERO (Z390), 9900K - Boot macOS |
使用しているWiFi/Bluetoothモジュールは、純正のMacで使用されているBCM94360CDです。以下の製品です。これをPCIeカードに挿して使用しています。
HackintoshでSidecarを動かす前に、同じiPad/Apple PencilとMacBookで動作確認しました。この場合は、Sidecarが問題なく動きました。次に、このHackintoshで試したところ、画面は出たのですが、有線接続でしか動きませんでした。iPadをUSB接続しない状態では、システム環境設定・Sidecarの「接続先」に「デバイスなし」と表示されてしまい、iPadが現れません。
有線で接続すると、接続先が選べるようになり、iPadが選択できます。MacBookでは無線でも問題なく接続できるので、Hackintoshなりの調整が色々必要なのだと思って、しばらく放置していました。ところが、何かの拍子で繋がるようになりました。実際に何をしたのかというと
- Z390マシンとiPadを有線接続でSidecarしました。
- Apple Pencil をペアリングするためにiPadから線を外してPencilを挿しました。
- この時「接続が切断されるよ」というような内容のダイアログがiPadに出ました。
- ペアリングが終わってPencilを外したらなぜか無線でSidecar接続しました。
これで無線でもiPadが選択できるようになりました。iPadがセカンドディスプレイになりますし、またPencilを使って画面操作もできます。Hackintoshであっても、Sidecarの本来の機能は全て利用できていると思います。
これ以前に、有線でSidecar接続中にUSBケーブルを外すことは試みていました。でも接続が切れるだけで、無線では接続できませんでした。今回なぜ可能になったのかわかりません。
今回行ったPencilペアリング操作は、無線接続できたこととは多分無関係です。SidecarはApple IDを介して動作していると説明されています。それぞれのマシンが同じApple IDで動作していることがSidecarを使うための条件です。なので対になるマシンの認定をアップル社のサーバーが行なっているはずです。今回、無線接続できた理由は、何らかのきっかけ、時間経過、またはアップル社の方針変更によって、Sidecar動作条件が満たされたからだと思います。有線接続の場合は、直接接続されていることが確実なので、ペアリング認定条件が緩かったのでしょう。このようなmacOS機能は、iMessageやFaceTimeと同じく、動作するかどうかはアップルのサーバー次第です。条件はいつでも変化するし、真相は謎のままです。
Fenvi T919で動かす
次に、Fenvi T919でも試しました。以下で紹介した無線PCIeカードです。中身は、おそらくBCM94360CDと同一と思われているので、問題なく動くはずです。
FenviのWiFi/Bluetooth PCIe拡張カードを入手しました。FV-T919という型番です。これに搭載された無線モジュールBCM94360CD はMac Pro 2013などで使用されているので、macOSと互換性が高く、OOBで問題なく動きます。FenviのFV-T919を発注Fenviというメーカが、Broadcomの無線モジュールであるBCM94360CDを使用したWiFi/Bluetoothアダプタを作ってます。PCIe拡張スロット (PCIe x 1) に挿して使用する拡張カードです。BCM94360CDはMac Pro 2013などで使用されている最上位モデル無線モジュールで、macOSとの互換性が高いです。取り付け... WiFi/BluetoothアダプタFenvi FV-T919 - Boot macOS |
使用したマシンは、以下で紹介したMSI B360M MORTAR TITANIUMに9600Kを搭載したHackintoshです。
銀色のマザーボードMSI B360M Mortar Titaniumに6コア6スレッドのCore i5 9600Kを組み合わせたHackintoshです。実機27インチiMac 2019に搭載されている第9世代CPUと同じCPUなので互換性が高いと期待しました。ハードウェア構成マザーボードマザーボードはMSI B360M Mortar Titaniumです。以下で使ったものと同じマザーボードです。CPU以外の構成は変わっていません。マザーボードのBIOS設定もこの記事をご覧ください。300シリーズチップセットの白いマザーボードを使いたい場合は、選択肢がこれしかありません。B360は、Z390/H370と同... MSI B360M MORTAR TITANIUM, 9600K - Boot macOS |
こちらも最初は接続できませんでした。Sidecarの接続先がグレーになっていて、iPadが選択できませんでした。しかし、Z390マシンでSidecarが可能になった後で、こちらもどう言うわけか、iPad選択できるようになっていました。Sidecarのペアリングを管理するサーバの設定が変わったのかもしれません。しかしZ390マシンの場合とは違って、iPadをSidecar接続しても、iPad画面が真っ暗でした。画面をミラーリングにしてApple PencilでiPadを操作すると、macOS画面のポインターは動きます。なので、遠隔ポインティングは効いているけど、表示が出ていないことがわかります。
Sidecarのビデオ転送にはiGPUの機能が使われているらしいと言う話を聞いたことがありましたので、iGPUをチェックすることにしました。BIOSで設定を見るとIGD Multi-Monitorの設定がDisabledになっていました。iGPUにもモニターを接続して、マルチモニターにするかどうかの設定だと思います。Disabledの場合は、iGPUの機能を無効にしていると思われます。そこで、これをEnabledにしました。メモリの設定はデフォルトの64MBにしました。この結果、無事にiPadに画面表示されるようになりました。
まとめ
HackintoshでもSidecarが動きました。USB有線接続なら問題なく接続できました。無線経由では、最初は接続できませんでしたが、よくわからないうちに無線接続できるようになっていました。また接続を実現するためには、通常のMac/iPadの条件に加えて、iGPUが動いている必要があるようです。とはいえiGPUを搭載していないiMac ProでもSidecarは可能なようなので、機種IDにも依存しているのかもしれません。
今回、Apple Pencilを初めて使ってみました。使い勝手や速度はちゃんとしてました。でもiPadに差し込むという初代Apple Pencilの充電方式は、緊急時には良いけど、普通に充電したい場面では使いにくいです。そのうちにこんなアクセサリを揃えてみたいと思ってます。