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ASRock Z590マザーボードでmacOSを起動する

ASRock Z590 ExtremeにComet Lake-S 10900Kを取り付けてmacOS Big Surを起動させました。今まで1900KはZ490で動かしていたのですが、なんとZ490のEFIのままでZ590でもログイン画面まで到達しました。課題はありますが一応の動作をしたのでご報告します。

更新:有線LANがどちらも動くようになりました 2021/3/29)

Z590マザーボード

第10世代CPUの10900Kを、今までASUSのZ490 Micro ATXマザーボードで動かしていました。

第10世代デスクトップCPU 10900Kを搭載したASUSのZ490マザーボードに、OpecCoreで起動するmacOS Catalinaをインストールしました。CPU, GPU, スリープ、Ethernet, サウンド, WiFiが全て動き、安定しています。間も無く登場すると言われているComet Lake-S搭載iMacに匹敵するマシンになると思います。ハードウェア構成こちらの記事で、10600を使ったhackintoshを作りました。これのCPUだけを10900Kに交換しました。他の設定は全く変更なく、引き続き動きました。マザーボードマザーボードは、ASUS micro-ATXマザーボードのROG STRIX Z49...
ASUS ROG STRIX Z490-G, 10900K - Boot macOS

計画変更でこれを通常ATXのマザーボードにしたかったのですが、今更Z490を買うのもつまらないので、いっそZ590のマザーボードにすることにしました。Z590は、今月末に発売される第11世代CPU用のチップセットですが、現行の第10世代CPUも動きます。第10世代+Z590でmacOSが動くという報告もいくつかあります。

間もなく発売される第11世代CPUは、アーキテクチャやiGPUなどが変更されるので、しばらくはmacOSが動かないと考えられてます。でも将来、iMacに第11世代が搭載されることになれば試してみたいと思います。

それでZ590マザーボードを物色しました。

減少するPCIeスロット

macOSマシンを自作するメリットの一つは、本物のMacに足りない拡張性を補うことだと思ってます。なのでマザボ選びには、いつもPCIeスロットの数を考慮して、スロット数が多いものを選んでいました。

でも、マザーボードに搭載されるPCIeスロットの数がだんだん減っているように思います。せっかく自作するなら良い部品を使いたいと思ってもいるのですが、特に上位モデルのマザーボードでスロットが減っている傾向があります。スロットのあった場所をM.2 SSDが占拠しているようです。Windowsで使う人たちもPCIeの拡張性をあまり重視しなくなっているのでしょうか?

(左がROG STRIX Z490-F, 右がZ590-F)

例えば、hackintoshするのに人気のあったASUSのROG STRIX F GAMINGを見てみます。ASUS ROG STRIX Z490-F GAMINGには6本あったPCIeが、同Z590-F GAMINGでは3本に減ってしまいました。Z590-Fの3本のPCIeスロットのうち、2本はCPU直結を分割しているので、両方とも使うとGPUへのレーン数が16から8に減ってしまいます。使いたくないところです。とすると、GPU性能に影響を与えないPCIeスロットは1本だけになります。Z490-FではGPUに影響を与えないスロットが4本あったので、4分の1に激減です。ASUSはPCIeスロット数が他社に比べて多い方だったのですが、残念です。

一方で、GIGABYTEとMSIは、以前からPCIeスロットが少なめでした。あっても、CPU直結を分割するタイプが多めでした。

そんなところで気づいたのはASRockのミドルレンジ製品でした。ASRockも、歯車が動くことで話題のZ590 Taichiは4スロットで、うち2本はGPU用レーンを分割するタイプです。GPUの性能に影響を与えずに拡張できるスロットは2本です。他社の上位モデルよりは1本多いですが、少ないです。ところがTaichiの下位モデルのZ590 Extreme, Z590 Steel Legend, Z590 Pro4, Z590 Phantom Gaming 4になると、GPU用のレーン数を分割しないタイプのスロットが4本もあります。今まで4大マザボメーカで、ASRockを使ったことがなかったのですが、今回は大いに検討することにしました。

ASRock Z590 Extreme

それで今回選んだのは、ASRock Z590 Extremeです。色々な点で魅力でした。

PCIeスロットが多い

PCIeスロットは5本あります。GPUスロットに割り当てられた16レーンを分割するタイプのスロットはありませんので、どれを使ってもGPU性能に影響は与えません。

 見た目が良い

ヒートシンクや基板の模様が斜めにカットされていたり、斜めの溝や斜線が多用されたマザーボードのデザインに飽きていました。GIGABYTEのZ590 VISION DやZ590I VISION Dなどは、斜線の要素がなくて、スクエアで端正だと思います。ATXサイズのZ590 VISION Dはスロット数が少ないのですが、元々スロットがGPU用しかないZ590I VISION Dには、興味があります。


VISION Dほどカッコ良くはありませんが、Z590 Extremeも、斜線要素が抑えられていて、スクエアな印象です。黒と青の配色も、レトロフューチャーなコンピュータのイメージで良い感じです。

互換性の高い有線LAN

2.5GbEのチップがRealtek RTL8125Bです。こちらで紹介したように、RTL8125用のkextが用意されているので、LucyRTL8125Ethernet.kextで動きます。他社のマザーボードだと、Intel I225-Vが搭載されていることが多いです。この場合は、FakePCIIDなどを駆使して動かす必要がありました。専用のkextの方が安心です。

ASRockのZ590 ExtremeとSteel Legendは仕様がほとんど同じなのですが、唯一の違いが、Extremeには1GbEのチップも搭載されていることです。これがIntel I210Vなので、IntelMausi .kextで動きます。IntelMausiEthernet.kextは動きませんでした。Z590マザボのI210Vのベンダー:デバイスIDが8086:15FAなのですが、Contents/Info.plistを見ると、IntelMausi.kextにはこのIDが設定されていますが、IntelMausiEthernet.kextにはありません。それが原因で動かないようです。IntelMausi.kextの方が頻繁に更新されているので、今後もこちらを使った方が良いと思いました。

無線用key Eソケットとアンテナ穴がある

WiFiなしのモデルですが、無線モジュール用のソケットとアンテナ穴があります。

ASRockマザボの無線LAN/Bluetooth用のM.2 key Eソケットは、CNViに加えて、従来型のPCIe + USB接続が可能なタイプです。こちらの記事で紹介したように、最近の多くのマザボはCNViのみの対応になっていて、macOSと互換性のあるWiFi/Bluetoothモジュールを取り付けることができません。ASUS, GIGABYTE, MSIのM.2 key Eソケットは、CNVi専用の場合が多いです。

ところが、ASRockの製品は、スペック表に以下のように書いてあるように、従来型の無線モジュールにも対応しています。これでmacOSにOOBで対応するBroadcomのBCM94360NGが使えます。

1 x M.2 ソケット (Key E), タイプ 2230 WiFi/BT PCIe WiFi モジュールと Intel® CNVi (統合 WiFi/BT) に対応

バックパネルにアンテナ穴が空いているのもポイントです。現在の国内のラインナップではWiFi付きのExtremeはありませんが(Steel LegendにはWiFi付きと無しがあります)、WiFi非搭載モデルにもアンテナ穴がちゃんと空いてます。バックパネルを統一してコストダウンするのが目的だとは思いますが、あとから無線モジュールを取り付ける場合には、とても助かります。

サウンドチップの互換性が高い

サウンドチップがRealtek ALC1220です。AppleALC.kextでサポートされているチップなので、互換性が高いはずです。実はまだ動かせてませんが、なんとかなると思ってます。ASRockは上位モデルのTaichiにもALC1220を使っているので、安心かと思います。他社のZ590モデルには、新しいチップのRealtek ALC4080が使われている場合が多いです。このチップにはAppleALC.kextが未対応なので音が出ない可能性が高いと考えました。ただ、TonymacX86の情報によるとGIGABYTE Z590 VISION Gでは、ALC4080がUSBオーディオ接続になっていて、何の問題もなく音が出たという報告があります。なのでサウンドチップの互換性の心配は不要なのかもしれません。

以上のように、ASRockのZ590シリーズは、全般的に安定したこなれた規格と部品が使われている傾向があって、hackintoshするには安心感のある構成かと思いました。

組み立てる

CPU、メモリー、M.2 SSD、CPUクーラー、グラフィックスカード類は、今まで使っていた使っていたASUS micro-ATXマザーボードのROG STRIX Z490-G GAMINGから取り外して移植しました。WiFi/BluetoothもBroadcomのBCM94360NGを取り付けました。これはOOBで動く唯一のM.2無線モジュールです。M.2 WiFiと書かれたM.2 key Eソケットにぴったり収まります。この後、アンテナを仮配線しました。

M.2 SSDには、Z490で起動させていた時のEFIがそのまま入っています。OpenCore 0.6.7です。メインのパーティションには、Big Sur 11.2.3がインストールされてます。グラフィックスカードはAMD Radeon 5700XTです。

構成をまとめると、以下になります。

BIOS設定

BIOS設定は、工場出荷時設定でも問題ありませんでした。でも通例にしたがって以下のように設定しました。

とりあえず起動

Z490マザーボードで動かしていたM.2 SSDのままで、とりあえず起動を試みました。なんと、ログイン画面まで問題なく到達しました。CPUは同じなのでそれほど問題ないとは思ってましたが、あっけなかったです。でも、キーボード、トラックパッドが効かず、ログインできません。USB機器が動いていないようです。

USBメモリで起動

移植に先立って、M.2 SSDのEFI部分を、USBメモリのEFI部分にコピーしてありました。ログイン画面に至ったところでUSB機器が動かなくなっている様子でしたが、OpenCoreなどが動く段階では、USBメモリーは動いています。なので、このUSBメモリから起動することが可能でした。

そこで、この起動用USBメモリを別のマシンで編集して、多少の調整をしました。まずは、IntelMausiEthernet.kextとLucyRTL8125Ethernet.kextを導入します。この記述をconfig.plistにも追加しました。次にconfig.plistからZ490関係の内容、つまりはDevicePropertiesの有線LANとサウンドに関する部分を削除しました。これでかなりZ590対応したと思うのですが、USB周りは手を加えてないので、やはりログイン画面でUSBが効かなくなったままです。

画面共有する

USB機器が動かない様子なので、画面共有で先を進めようと考えました。ルーターのDHCPのログを見ると、新しいマザーボードに1個だけアドレスが割り当てられていました。そこで、このアドレスに対して画面共有を行ったところ、無事ログイン画面が現れました。ここで、ログインして全ての操作が可能になりました。システム環境設定からネットワークを調べたところ、動いていたのはWiFiのBCM94360NGでした。

当初、有線LANは、Intel I225-VもRealtek RTL8125Bも、どちらも動いていませんでした。Intelが動かなかったのは、前述のように、IntelMausiEthernet.kextを使っていたのが原因でした。IntelMausi.kextに変えて動くようになりました。RTL8125Bが動かなかったのは、前のZ490マザーボードの設定で、ジャンボフレームが使用したかったので、2.5Gハブ接続するよう固定してしまっていたからでした。それを1Gハブに接続したので動かないようでした。自動モードにしたら動くようになりました。

USBInjectAll.kextを入れる

画面共有から接続して、Hackintool.appで調べたところ、USBポートが一つも見えてませんでした。元々Hackintool.appで作ったZ490マザボ用USBのためのkextを入れていたので、これが動いていないと考えました。そこで、USBInjectlAll.kextを入れてみたのですが、やはりUSBは見えませんでした。ちょっと探したところ、Z590チップセットに対応したUSBInjectAll.kextがあるようでした。

Hackintool.appで調べると、Z490のXHCI Host ControllerのVender:Device IDは8086:A36Dですが、Z590の場合8086:43EDでした。これらの違いを反映したUSBInjectAll.kextが必要なようでした。上記のサイトからソースコード一式をダウンロードして、makeコマンドでkextを作ることができました。コンパイルしたZ590用のUSBInjectAll.kextをここに置いておきます

これでUSBが見えるようになりました。上はHackintool.appで調べた様子です。USB Receiverというのはlogitechのトラックパッド付きキーボードです。これでログインもmacOSの操作もできるようになりました。BRCM20702 Hubは、BCM94360NGのBluetooth部分です。これでBluetoothが見えて、純正Magic Trackpad/Keyboardも接続できるようになりました。ASM107xというのは、マザボ搭載のUSBハブかなと思います。今の状態だとUSB 3.1が使えないので、今後は使うべき15個のUSBポートを選択して、kextを作っていきたいと思います。

EFI構成

以上の作業で、UEFIの構成は以下のようになりました。ACPIフォルダが、

Kextsフォルダが

です。config.plistはDortaniaさんのComet Lakeガイドとほぼ同じです。機種IDはiMac20,1です。

追記:使用中のEFIをこちらに置いておきます。config.plistのシリアル番号などはみなさんで設定してください。Radeon RX 6xxx以外の方は、ブートオプションのagdpmod=pikeraを削除してください。OpenCore 0.7.6です。USBは設定済みで、オンボードオーディオも動きます。

まとめ

ASRockのZ590 Extremeに10900Kを搭載してmacOSを動かしました。現状では

状態です。少しずつ対策していきたいと思います。

追記:オンボードオーディオが動きました:

(こちらは古い情報です。最新のAppleALC.kextを使うことで、ここで行った手順は不要になりました。こちらをご覧ください。2021/4/10)ASRock Z590 Extremeに搭載されたサウンドチップRealtek ALC1220から音が出るようにしました。Z490のマザーボードを最初に使った時と同様に、FakePCIID.kextを使いIDを偽装します。近い将来、Z490の時と同様に、AppleALC.kextとOpenCoreがZ590チップセットに対応すれば、このような工夫なしで動くようになるのではと期待しています。Z590マザーボードのサウンド前の記事で、ASRock Z590 ExtremeにCom...
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