「いま一番おすすめの自作MACOS PCパーツ構成」という記事を書いてから1年経ってしまいました。状況が色々変化しているので2021年版として更新します。前回同様、「一番」と言うお題なので、無理して一つ選んで、その後に言い訳や代替案を書きました。ご意見・ご異論あると思いますのでコメントでお知らせください。
なお、いろいろな作例をBUIDSのカテゴリーでまとめてあります。またUSER BUILDSのFORUMに皆さんからお寄せいただいた多数の作例が集まっています。参考になさってください。
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逆風の1年
思い返せばこの1年は色々ありました。まずはM1 Macが実際に発売されて大評判でした。CPU性能が予想以上に優れていて、iGPUもIntel内蔵GPUに比べたら圧倒的に高性能でした。Mac mini全モデル, MacBook下位モデル、iMac下位モデルはM1に置き換わるとは予想していましたが、これだけM1の性能・評判が良いと、Mac上位機種は今のままでしばらくは更新されないかもしれません。その結果、メインストリームIntel CPU搭載のMacはもう発表されない可能性もあります。とはいえ今のM1は拡張性が無いので、Intel CPUで自作するメリットはまだあると思います。将来のmacOSではIntel CPUが使えなくなる予定ですが、次世代のMac ProもXeon W-3300シリーズだという噂もあります。まだしばらくは、macOSでのIntel CPUサポートは継続されると思います。
もう一つは、マイニングブーム再燃と半導体不足の影響で、グラフィックスボードが高騰していることです。多少は市場が落ち着きつつあるようですが、それでもまだまだ高価です。Radeon RX570/RX580の中古ですら3万円〜4万円で取引されている状況です。Windowsで自作する人たちを含めて、自作PCに向いていない時期です。
そのような状況ですが、お勧めの自作最新パーツ構成を考えてみます。
CPU: Intel Core i9-10850K または 10900K
現行のMac製品の中で最新Intel CPUを搭載しているのがiMac20,1と20,2です。Intelの第10世代CPU (Comet Lake-S) である10500, 10600, 10700K, 10910を搭載しています。このうち市販されているCPUは10500, 10600, 10700Kですので、これらを使用すれば、実機と同じCPUで自作できます。10910は、Appleが特注したCPUらしく、市販されていません。後述のように10910は、10900Kより若干低い性能で、10850Kと同等性能のようです。10900Kより性能が下がっているのですが、下位モデルと思われたくなくて数字を上げて10910としたのではないかと勘ぐってます。ということで、10850K, 10900Kなども問題なく動くと思われます。
一方、tonymacx86のUltimate Buyer’s Guideでは以下のCPUが推薦されています。(太字は特にお勧めできると考えたCPUです)
- 10900K (3.7Ghz / 10 Cores / 20 Threads)
- 10850K (3.6Ghz / 10 Cores / 20 Threads)
- 10900 (2.8Ghz / 10 Cores / 20 Threads)
- 10700K (3.8Ghz / 8 Cores / 16 Threads)
- 10700 (2.9Ghz / 8 Cores / 16 Threads)
- 10600K (4.1Ghz / 6 Cores / 12 Threads)
- 10600 (3.3Ghz / 6 Cores / 12 Threads)
- 10500 (3.1Ghz / 6 Cores / 12 Threads)
- 10400 (2.9Ghz / 6 Cores / 12 Threads)
- 10320 (3.8Ghz / 4 Cores / 8 Threads)
- 10300 (3.7Ghz / 4 Cores / 8 Threads)
- 10100 (3.6Ghz / 4 Cores / 8 Threads)
このリストのどれを選んでも安定して稼働すると期待できます。今回は推薦CPUとして10850Kを選びました。理由は、どうせ自作するならM1に勝つ最強マシンにしたかったからです。M1のGeekbench 5スコアは、シングルコア性能で1700、マルチコア性能で7400くらいです。第9, 10世代のIntel CPUはどれもシングル性能で勝てない(1250くらい)ですが、マルチなら10600, 10700あたりが近いスコアを出しています。10コアの10850Kと10900Kならば、マルチが10000を超えるので、M1に勝てると考えました。
10900Kの方が10850Kより高性能です。ただその差は、クロック数で2%~3%違うだけです。同じウェハーから作って選別しているという推測から、10900Kの方がオーバークロックには強そうですが、定格で使う限りは性能差は誤差程度だと思われます。価格差に見合う性能差ではありません。でも、潔く最高の性能を目指すなら10900Kが良いと思います。(追記:最近の価格を再度調べたら、10850Kは値上がりし、記事執筆時に比べて、10900Kとの価格差が大幅に縮小してました。現時点なら10900Kのほうが良いと思います。2021/11/12)
quick reference guide including specifications, features, pricing, compatibility, design documentation, ordering codes, spec codes and more. Product Specifications - |
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一方、10850KとiMacに搭載された10910のスペックはおそらく完全に同一です。特注品の10910に相当する市販製品が10850Kだと考えることができます。
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iMac発売当時は10850Kが発表されていませんでした。おそらくは排熱の制約からクロックを下げた10900Kが欲しかったAppleは、やむを得ず10910を特注したのかと思います。後に10910相当品をIntelが商品化したモデルが10850Kだと思われます。なので、10850Kにすれば最上位iMac20,1, 20,2と可能な限り同じ構成にできる点も多少嬉しいです。
M1に対抗する必要はないと考えるのでしたら、コストパーフォマンスの良い、10700K, 10400がおすすめかと思います。kakaku.comを見ると、10400, 10700, 10100, 10700Kあたりが売れ筋上位にあるようです。iMac20,1に搭載されている10600, 10500は、初期の製品であるためなのかあまり売れていないようです。これらの上位、下位製品の10700、10400の方がコストパーフォマンスが良いと考えられているのだと思います。
10850Kを選んだもう一つの理由は、IntelメインストリームCPUでは最強だからです。Intelの現行製品はすでに第11世代に移行しています。第10世代に比べて、シングルコアの性能は上がったものの、10コア製品が作れなくて、マルチコア性能では10900Kや10850Kに負けています。第11世代がイマイチな出来だったので、すぐに第12世代に移行するらしいですが、引き続きマルチコア性能で10900K, 10850Kに負けているという噂が流れています。第10世代10コアを選んでおけば、しばらくは新製品に性能負けしないのが嬉しいです。実際に10コアあると仕事が捗るというような事情は全くありませんが、ロマンです。
ちなみに現行の第11世代のCPUは、macOSで動く報告があります。ただし、CPU IDを書き換える必要があるようです。また、macOSが第11世代をサポートしていないので、そのiGPUも使えないそうです。今後のiMacが第11世代を搭載するまでは(その可能性は低いですが)、第11世代を採用するメリットは少ないと思います。
マザボ:ASRock Z590 Extreme
CPUに第10世代を採用するなら、マザーボードのチップセットは400番か500番シリーズになります。ZタイプのチップセットならZ490かZ590が第10世代対応です。Z590は第11世代にも対応しています。第11世代ではCPUから周辺チップへのバス性能が向上して、ほとんどのZ590ボードではCPU直結のM.2 SSDソケットが用意されています。第10世代CPUではこのソケットが使えず無駄になるデメリットはあります。ただ、売れ筋はZ590に移行していますし、将来、第11世代に移行することも考えるとZ590マザーボードを選んでも良いと思います。macOSとの互換性も問題ありません。
それでお勧めのマザーボードとしてASRock Z590 Extremeを選びました。この製品にはWiFi付きのASRock Z590 Extreme WiFiもありますが、WiFi無しがお勧めです。(WiFi付きは今は国内に流通していない様子です)以下の記事と、それに引き続く記事にあるように、現在手元で使っているマザーボードです。
ASRock Z590 ExtremeにComet Lake-S 10900Kを取り付けてmacOS Big Surを起動させました。今まで1900KはZ490で動かしていたのですが、なんとZ490のEFIのままでZ590でもログイン画面まで到達しました。課題はありますが一応の動作をしたのでご報告します。(更新:有線LANがどちらも動くようになりました 2021/3/29)Z590マザーボード第10世代CPUの10900Kを、今までASUSのZ490 Micro ATXマザーボードで動かしていました。計画変更でこれを通常ATXのマザーボードにしたかったのですが、今更Z490を買うのもつまらないので、いっそZ590のマザ... ASRock Z590マザーボードでmacOSを起動する - Boot macOS |
選んだ理由も上記の記事で詳しく説明しました。要約すると、
- PCIeスロットの数が多い
- こなれた有線LANチップ搭載でmacOS互換性が高い
- 見た目がスッキリしている
- macOS互換の無線用key Eソケットとアンテナ穴がある
のがこれを選んだ理由です。詳しくは上記の記事をご覧ください。
ほぼ同じ機能のASRock Z590 Steel Legendも良いと思います。違いは、1GB 有線LANが省かれて、サウンドチップがALC 1220からALC 897にダウングレードしているくらいです。そのため少しだけ安いです。PCIeスロットが多く、有線LANチップ、無線カードソケットの互換性が高い点はExtremeと同じです。デザインは、個人的にはExtremeの方が好きです。でも白いコンピュータを作りたい場合は、こちらが良いです。Steel Legendは、2,000円高いWiFiモデルも国内流通してます。互換性の高い無線カードに置き換える場合でも、アンテナ配線の手間を省くためにWiFiモデルを買うのもありかもしれません。
グラボ:Radeon RX 6600 XT
macOS Monterey 12.0.1がサポートしている現行グラフィックスボードは、Radeon RX 6800, 6800 XT, 6900 XTのみで、どれも価格は最低でも15万円です。しかし、macOS 12.1からは、RX 6600, 6600 XTがサポートされることになりました。
AppleのmacOS 12.1 betaリリースノートによると、AMD Radeon RX 6600XTが使えるようになったとのことです。色々なサイトで話題になっていますが、元ネタは以下のようです。情報のまとめこれによると「ディスプレイに関するmacOS Monterey 12.1 betaの新機能:AMD Radeon 6600XT GPUを搭載したグラフィックスカードが使用可能になります。」とのことです!Redditのコメントには以下のような内容が書かれてました。 Radeon RX 6600無印も6600XTと同じくNavi 23なのでdevice IDを偽装すればたぶん動く Radeon RX 6900XTの新しいバージョ... macOS 12.1からRadeon 6600XTが使える - Boot macOS |
Radeon RX 6600 XTをmacOS 12.1で試したところ、問題なく動作しました。5700 XTのベンチマーク比較では、Metalの性能が8%ほど良くなっているようです。ほとんど変わりませんが、TDPは下がっているのでワットパーフォマンスは高いです。箱から出す今回使ってみたRX 6600 XTは、Sapphire PULSE Radeon RX 6600 XTです。Sapphire PULSEは、RX 580の時にApple External Graphics Development Kitに搭載されているので、macOSと相性が良さそうな印象があります。グラボ一般が品薄なためか、価格は不安定です。価格.comの価格推移グラフによ... Radeon RX 6600 XTをmacOSで使う - Boot macOS |
なぜかRX 6700はサポートされませんが、ローエンドの6600が対応したことで、お手頃な価格で入手可能になりました。
上記の記事で紹介したように、6600 XTでも、Radeon RX 5700 XTを超える性能が得られます。ベンチマークスコアでM1 Maxにも勝てます。12.1以降ならば非常に安定して動くのでおすすめです。予算に余裕があるなら、6800, 6800 XT, 6900 XTも良いです。6600に比べて3倍近い性能があるとのことです。
グラボの価格がさらに落ち着くまで、iGPUで凌ぐのも良いかもしれません。でも最近のiGPUは設定が結構大変です。実はこの記事に先立って、10900KのIntel UHD Graphics 630の設定を試みたのですが、うまく動かなくて挫折しました。すでにグラボを持っていて、頑張るモチベーションが足りないこともありますが、なかなか難しいと思いました。
6600でも予算オーバーという場合は、互換性のある古いカードを中古やオークションで探すのも良いかもしれません。以下の記事にmacOSと互換性のあるボードが説明されています。例えばNVDIAのKeplerシリーズなら動きます。
CatalinaのためにどのGPUを選んだら良いかという記事がありましたので抄訳して紹介します。また、その後のmacOSでNaviシリーズがサポートされたので、この情報を追記しました。結論は、AMDならばRadeonの RX 6600, RX 6600 XT, RX 6800, RX 6800 XT, RX 6900 XT RX 5500, RX 5500 XT, RX 5600, RX 5600 XT, RX 5700, RX 5700 XT RX 460 / 560 / 470 / 570 / 480 / 580 / 590 RX Vega 56 / 64 / VIIを、Nvidiaならば Kepler シリーズ (GTX 6xx, 7xx など)が動きます。ただし、MontereyからKeplerシリーズは動かなくなりました。古... macOSのためのGPUの選び方 - Boot macOS |
ただしMontereyからKeplerがサポートされなくなりました。古いドライバを持ってくることで動かすことは可能です。
Install Nvidia binaries files on Snapshot disk for macOS Monterey 12 - chris1111/Geforce-Kepler-patcher Releases · chris1111/Geforce-Kepler-patcher - GitHub |
無線モジュール:Fenvi FV-T919
これは迷うところはないです。WiFi/Bluetoothが、取り付けるだけですぐに動きます。設定やkext類が不要です。macOSにはWiFi/Bluetoothが前提の機能がありますので、互換性の高い無線モジュールが必要です。詳しくはこちらを。
FenviのWiFi/Bluetooth PCIe拡張カードを入手しました。FV-T919という型番です。これに搭載された無線モジュールBCM94360CD はMac Pro 2013などで使用されているので、macOSと互換性が高く、OOBで問題なく動きます。FenviのFV-T919を発注Fenviというメーカが、Broadcomの無線モジュールであるBCM94360CDを使用したWiFi/Bluetoothアダプタを作ってます。PCIe拡張スロット (PCIe x 1) に挿して使用する拡張カードです。BCM94360CDはMac Pro 2013などで使用されている最上位モデル無線モジュールで、macOSとの互換性が高いです。取り付け... WiFi/BluetoothアダプタFenvi FV-T919 - Boot macOS |
マザーボードにASRockのZ590 ExtremeやZ590 Steel Legendを使う場合は、BCM94360NGを使うのも良いと思います。このカードはmacOSでそのまま機能する唯一のM.2用WiFi-Bluetoothモジュールです。これも取り付けるだけでそのまま動いて、Apple IDやiPhone連携、MontereyのAirPlayサーバーなどが問題なく動きます。
AliExpress.com Product – BCM94360NG M.2 Wifi BT4.0
ASUS, GIGABYTE, MSIの、Z490/Z590マザーボードのM.2 key Eソケットは、CNVi専用の場合が多く、動かない可能性があるので注意が必要です。ASRockは従来型のM.2 key E無線モジュールを引き続きサポートしてくれているのでBMC94360NGが動作します。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
ASRock Z590 ExtremeにComet Lake-S 10900Kを取り付けてmacOS Big Surを動かしています。今回はこれにmacOSでOOBで機能するWiFi-BluetoothモジュールBroadcomのBCM94360NGを取り付けました。このマザーボードはバックパネルにアンテナ取り付け穴が空いているので、アンテナ取り付けが楽です。BCM94360NGBCM94360NGはmacOSでそのまま機能する唯一のM.2用WiFi-Bluetoothモジュールです。お値段は少し高いですが、kext類なしでそのまま動いて、Apple IDやiPhone連携なども問題なく動くので、hackintoshするには定番の無線モジュールです。... ASRock Z590 Extremeに無線モジュールを取り付ける - Boot macOS |
この他のパーツ
M.2 SSDに関しては、SamsungのNVMe SSDは避けた方が良いようです。 WD SN750 や SN850 などは確実なようです。それ以外のパーツ、例えばメモリー、電源、HDD、CPUクーラー、などは大体どれでも良いです。メモリーは16GBもあれば十分です。電源は600Wくらい、起動ドライブはSSDがおすすめで256GBあれば当分は使えて、最低必要なのは30GBくらいです。一般の自作PCでの評判を参考に適当に選んでください。
現在のM1搭載Macでは、メモリーも内蔵SSDも購入時に容量を決めた後は増設できません。しかもかなり高価です。自作する場合にメモリー、M.2 SSDをより多く確保すれば、自作のメリットがより大きくなります。