Apple純正ケースで作るHackintosh

自作PCの楽しみ方の一つにcase mod (ケースモッド:PCケースの自作改造) があります。ゼロからケースを自作したり、市販のケースをもとに芸術的もしくはオタクな装飾を加えて改造することです。また、かっこいいメーカー製デスクトップ筐体を利用してそこに標準的なマザーボードを組み込む楽しみ方もあります。「かっこいいメーカー製筐体」といえばApple製品が代表的なので、古いMacを改造して最新のPCに作り変える例が、ネットで多数紹介されています。こうして古いMacに組み込んだ最新マザーボードで、Hackintoshを動かす人も多いです。

古いMacを改造してHackintoshすることのメリットになるのかどうかわかりませんが、よく議論されるのがライセンスの話です。ご存知のようにmacOSの使用許諾書(EULA: End User License Agreement) には「macOSはApple製のMacにのみインストールできる」と書かれています。これに同意しながらHackintoshすることはApple社との契約違反になります。一方でMacのケースにATX基板を入れれば、Apple製コンピュータを最新の部品に交換しただけと主張できなくもないです。その主張が通るのかどうかわかりませんが、100%他社製品でHackintoshするよりも契約違反の度合いが少ないのは確かです。

デザイン重視Macを改造

Hackintoshをしている人たちの大多数は、MacのハードウェアやmacOSを非常に気に入っているものの、デスクトップ製品のラインナップに不満を持っています。Mac miniとMac Proの中間のデスクトップが欲しいとか、ディスプレイ無しのiMacが欲しいとか考えています。また、新しいCPU/GPUに世代交代しても一向に新製品が出ず、かといって最新の部品に交換したり拡張する手段が無いことにも不満を感じています。Macの外観を持ったままで、最新のハードウェアで作り直すことができれば理想的です。ということでtonymacx86でも、Macを改造してHackintoshしたという投稿が多数あります。そのために、case modのコーナも用意されています。

ここでは様々なMacがHackintoshに改造されています。Macの歴史の中でも、デザインが秀逸で人気のあるモデルの一つがPower Mac G4 Cubeです。多くの人が、G4 Cubeの改造を手がけています。この筐体は、Mac Pro 2013と同様に、筐体の中央が放熱板になっていて、下から上に煙突のように空気が流れる構造です。コンピュータの中身をスライドして取り出せる機構もあり、改造には高度な工作技術が必要です。多くの例では、mini ITX基板に交換しています。標準的な基板を搭載できるよう改造することで、いつでも最新のCPU、チップセット、メモリを使用した高性能なmacOSマシンになります。

G4 Cubeにmini ITX基板を取り付ける様子を紹介した日本語動画もあります。

歴代Macの中で、おそらく一番奇抜なデザインだったのが、最初の液晶ディスプレイ (LCD) 搭載iMacです。白い半球型の本体、自在に動かせるアーム、このアームに取り付けられたLCDの構成です。この改造も難易度は高いです。LCDからのケーブルを配線し直してDVIにします。本体部分は、非常にコンパクトなので、NUCが使われます。

Mac Pro/PowerMac G5ケース

一方で筐体の大きなデスクトップ機を使えば、改造はずっと簡単です。大型のデスクトップMacには、Power Macintoshシリーズ、Power Mac G3/G4/G5、タワー型のMac Proがあります。Power Macintoshシリーズは、古くて中古市場にあまり出回っていないことと、Apple暗黒時代の凡庸なデザインなので、これをmodする例はほとんどありません。一方、Jobsが復帰してからのPower Mac G3/G4は、ポリタンクと言われた独特の形状と透明感のある外観で、いまだに人気があります。modのためのキットも売られています。ただ、筐体表面はポリカーボネートですが、筐体内部が硬い鉄製であることと、光学ドライブが標準マザーボードと干渉しやすい構造なので、工作が大変です。

これに対して、Power Mac G5と、その形状を引き継いだタワー型Mac Proは、大型で内部空間に余裕があり、素材が柔らかいアルミニウムです。そのため加工が容易で、標準mATX/ATXマザーボードを組み込みやすいです。改造してHackintoshにするには最適な機種です。

G5とMac Proのどちらが改造に適しているか

もしMacのケースにATXマザーボードを組み込むなら、Power Mac G5とタワー型Mac Proのどちらを改造したらよいでしょうか。結論としてG5の方が適しています。

まず、G5の方が安価です。タワー型Mac Proは、設計が色々と古くなってしまってはいますが、インテルCPUを使用していますし、拡張の余地があるためにまだ実用性があります。CPUを差し替えて性能向上させる人も多いです。そのため中古市場やオークションでもある程度の価格がついています。一方でG5は、流石に古くて、なおかつCPUが古いPower PCであるため、ほとんどがジャンク品として売られています。ケースだけを利用して改造する場合には、中身に価値を求めませんのでG5で十分です。

改造にG5が適している理由は、価格以外にもあります。一見すると、G5もタワー型Mac Prも穴が多数開いたパンチングパネルの似たような筐体ですが、レイアウトがかなり違います。こちらに比較があります。

Mac Pro vs. PowerMac G5 – Apple’s Mac Pro – A True PowerMac Successor

正面から見た一番の違いは、光学ドライブの個数です。G5は一台を搭載しますが、Mac Proは2台搭載可能です。でも今時、光学ドライブは1台あれば十分です。不要と思う人も多いくらいです。3.5 インチドライブに関しては、G5は2台、Mac Proは4台内蔵可能です。でも最近は2.5 インチ やm.2のSSDを多数使うことが多くなりました。またMac Proの3.5 inchベイは特殊な配置で、標準マザーボードを搭載した時に利用し難いです。光学ドライブや3.5インチドライブが衰退しつつある今から見ると、皮肉なことに、古いG5の方が新しいProよりも現状に即した設計だと言えます。

内部の違いも見てみましょう。下の写真は、左がG5で、右がProです。

どちらも、水平の仕切り板が1枚、棚板のようにあり、上部と下部に分かれています。G5は、上部に光学ドライブが1台、3.5インチHDDが2台配置されています。Proは上部に光学ドライブが2台、電源が配置されています。仕切板上部空間は、G5の方が狭いです。そのためG5の方が、仕切板下のメイン部分が大きいです。メイン部分が大きいG5の方が、部品配置を柔軟に行えるので有利です。

G5とProでは拡張スロットの数も違います。G5は4本で、Proは5本です。micro ATXのスロット数は4本なので、G5ケーズを使うとそのまま全部有効利用できます。Proを使うとスペースが余って無駄が出ます。もっとも、スロット数の多い標準ATXを使う場合は、どちらも加工が必要です。

Proの電源は、標準的なATX電源に近いサイズなので、改造する場合にオリジナルの場所に電源を設置しやすいのではないかと思われるかもしれません。しかし、タワー型マシンで使うような容量の大きいATX電源は、上部もしくは下部に大型のファンがあり、そこから吸気します。Proの電源設置場所は、上下に開口部がありませんので、電源のエアフローが不利です。筐体上部に穴を開けてしまえばよいのですが、見た目が気になります。

G5の電源は、写真ではわかりにくいのですが、最下部にあります。平たい特殊な形をしています。元の形状を尊重してcase modする人は、標準ATX電源をバラして、平らに配置し直して、G5の電源部分に収納している人もいます。ただ、G5の電源は取り払ってしまって、そこに通常のATX電源をおくことも可能です。メイン部分が広いことのメリットです。

ということで、Macのタワー型アルミニウム筐体をHackintoshに改造するなら、Mac Proよりは、Power Mac G5の方がおすすめかと思います。こちらのブログでは、Power Mac G5やMac Proの改造が紹介されています。日本語の情報は少ないので、参考になります。

またYoutubeで”G5 mod”のようなキーワードで検索すると、参考になる動画が多数見つかります。

tonymacx86では最新のCoffee Lakeで作った例も紹介されています。

Laser Hiveの改造キット

Macの筐体を改造する場合に苦労する点は、オリジナルとは形状の違うマザーボードの取り付け方法と、そのバックパネルの加工です。こちらのサイトでは、MacケースにATXマザーボードを搭載するためのキットを販売しています。Power Mac G3/G4/G5とMac Pro用のキットを販売しています。

これらのキットを使わなくても改造は可能です。特に、Power Mac G5とMac Proは、アルミニウム製で加工が簡単なので、キットを使わなくても改造できなくはないですが、キットを使えば楽になります。上で紹介したサイトでも、Laser Hiveのキットを使った例が紹介されています。

Power Mac G5とMac Pro向けに、Laser HiveではATXマザーボードとmicro ATX (mATX)マザーボードを取り付けるためのキットをそれぞれ販売しています。Power Mac G5向けには、

  • オリジナル92mmファンx2を使ったmATXボードキット
  • 120mmファンx1を使うmATXボードキット
  • オリジナル92mmファンx2を使ったATXボードキット
  • 120mmファンx1を使うATXボードキット

があります。

G5にはもともと4本の拡張スロットがあり、これはmATXの拡張スロット本数と同じです。なので、mATXボードキットは、オリジナルの拡張スロットをそのまま活かすことができます。また、オリジナルの92mmファンを使用するキットでは、元々あるファン取り付けプラスティック部品や、ファンの排気カバーなどを再利用します。なので、Macの元々の形をできるだけ残したい場合には、「92mmx2ファン+mATXキット」が適しています。一方、mATXマザーボードは製品の種類が少ないので、それが気になる人は標準ATXのキットが良いと思います。

G5改造の手順

Laser HiveのmATXキットを使って、壊れて廃棄されたG5を改造したことがあります。大した作業ではないのですが、予想以上に手間がかかりました。市販のPCケースを買ってきて組む方が圧倒的に簡単です。手作りする楽しさはありますが、それ以上に、G5の外観を生かしたマシンを作りたいという強い思いが必要です。手順は、以下のようになります。

  1. ジャンクのG5をバラして掃除します。CPUカバーだけは1本の樹脂製ピンを壊さないと取り外せません。他は、破壊せずに分解できます。サイドパネルをロックする機構の分解には、知恵の輪を解くような根気が必要です。でもこれが外せないと棚板、HDD冷却ファン、HDD取り付けケージを外せません。埃を払って綺麗にします。
  2. 利用できるパーツを残して、不要なパーツは捨てます。ロジックボードなども捨てることになります。ファン取り付け部品、HDD取り付け部品、スイッチ類、ケーブル類、電源ケーブルソケット、カバー類などを上手に利用できれば、オリジナルの雰囲気をより活かせます。
  3. ロジックボードを取り付けていたスペーサのうち、不要のもの取り外します。スペーサは溶接されたようにケースに固定されていますが、ハンマーで叩くと、簡単に外せます 。ただしLaser Hiveのマザーボードトレイを取り付けるために使用するスペーサは、外さず残します。
  4. 裏側パンチングメタルを切り取ります。Laser Hiveのバックパネルの形に合わせて切り取ります。アルミなので、加工は楽です。
  5. Laser Hiveのマザーボードトレイとバックパネルを取り付けます。
  6. マザーボード、ファン、電源、HDDを取り付けて配線します。

手作りのPCケースですので、市販のPCケースに比べると保守やアップグレードが面倒です。でも実機と同じ見た目の美しいHackintoshを作り上げる満足感があります。

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