M1 Mac miniが予想以上に高性能なので話題になってます。価格も安いので、自作する意味は無くなったのでしょうか。自作機とコストパーフォマンスを比較しました。
Table of Contents
M1 Mac miniのスコア
Geekbench Browserによると、M1 Mac miniのCPUスコアは
- Single 1,700
- Multi 7,500
くらいのようです。発売前の予想以上に性能が高いので評判になってます。特にシングルの性能が高いです。一方で内蔵GPU (iGPU) は、
- OpenCL 19,500
- Metal 22,000
くらいのようです。どちらも同程度の値なので、以下ではOpenCLで比較します。
M1相当の自作パーツ
最近のOpenCoreベースのhackintoshは、Geekbenchにスコアを上げるとAcidantheraというキーワードが入ります。そのキーワードで検索しました。現行CPUの中で、マルチで7,500が出るものを探すと、10700あたりになります。10700は概ね以下のスコアでした。
- Single 1,200
- Multi 8,500
M1と比較するとシングルで負けてマルチで勝ってます。マルチは9000超える結果も多数登録されてますが、シングルで負けているので、10700あたりがM1に相当する性能かと考えました。一つグレードを下げて、10600の結果を探すと、マルチが7000未満になるので、こちらは明らかにM1に劣ってしまいます。
一方で、OpenCL, Metalで2万台のスコアを出す結果を探してみると、RX-560を搭載したマシンが、大体25,000程度のスコアでした。ということで、M1搭載Mac miniと同等の性能を出すマシンを自作するためには、CPUに10700を、GPUにRX-560を選択すれば良いことになります。
mini最小構成で比較
M1 Mac miniの最小構成ではメモリが8GBで、SSDが256GBです。デスクトップマシンとしては少ないです。でも世間の評価を見ていると、メモリの効率が良くなったので8GBでも困らないという説もあります。SSDも少ないですが、クラウドストレージが一般的なのでこれでも実用性があるのかもしれないです。最小構成の価格は、税込で80,080円です。
これに対して、10700 + RX-560の構成で、いくらで自作できるのか調べてみました。kakaku.comの価格で計算してくれるサイトがありました。
ここで現行製品で見積もってみます。RX-560は既に販売されてなくて中古しかないようです。RX-570なら販売されてました。中古価格で見積もっては不公平だと思うので、RX-570に変更しました。こちらはGeekbenchで調べるとスコアが4万くらいなので、性能はM1 iGPUの倍になります。他の部品は、安めのものを選びました。その結果、
【CPU】インテル Core i7 10700 ¥38,272 【CPUクーラー】サイズ 虎徹 MarkII SCKTT-2000 ¥3,938 【メモリ】Corsair CMK16GX4M2A2666C16 [DDR4 PC4-21300 8GB 1枚] ¥3,290 【マザーボード】ASRock H470 Phantom Gaming 4 ¥12,882 【ビデオカード】MSI Radeon RX 570 8GT OCV1 [PCIExp 8GB] ¥15,734 【SSD】ADATA XPG SX6000 Lite ASX6000LNP-256GT-C ¥3,980 【ケース】Thermaltake CA-1J5-00M6WN-01 ¥4,117 【電源】玄人志向 KRPW-BK650W/85+ ¥6,264 【Wi-Fi/Bluetooth】Fenvi T919 ¥5,100 【合計】¥ 93,677
となりました。Wi-Fi/Bluetoothカードは、上記の見積もりサイトには当然ながらありませんので、Fanviの価格を追加しました。コストと性能をまとめると以下になります。
M1 Mac mini | 自作 macOS | |
CPU | M1 | 10700 |
GPU | M1 | RX-570 |
メモリ/SSD | 8GB/256GB | 8GB/256GB |
CPU シングル | 1,700 | 1,200 |
CPU マルチ | 7,500 | 8,500 |
GPU OpenCL | 19,500 | 40,000 |
税込価格 | 80,080 | 93,677 |
改めてM1 Mac miniのお買い得度がわかります。miniはメモリもSSDも拡張できないという欠点があります。SSDは外付けするという手がありますが、メモリは増強できません。でも純正Macなので、hackintoshの苦労(たのしみ?)が不要という大きなメリットがあります。この構成ならばMac miniを買った方が良いですね。
mini最大構成で比較
次に、Mac miniをオプション全部盛りの条件で比較します。とは言っても、メモリを16GBにしてSSDを2TBにできるだけです。SSDは個人的には1TBもあれば十分なのですが、動画編集などされる方は、これくらい必要なのかもしれません。価格は税込190,080円になります。
自作する場合も計算しなおします。メモリを16GBにして、SSDを2TBすると、以下になります。
【CPU】インテル Core i7 10700 ¥38,272 【CPUクーラー】サイズ 虎徹 MarkII SCKTT-2000 ¥3,938 【メモリ】Corsair CMK16GX4M2A2666C16 [DDR4 PC4-21300 8GB 2枚組] ¥6,573 【マザーボード】ASRock H470 Phantom Gaming 4 ¥12,882 【ビデオカード】MSI Radeon RX 570 8GT OCV1 [PCIExp 8GB] ¥15,734 【SSD】WESTERN DIGITAL WD Blue SN550 NVMe WDS200T2B0C ¥26,379 【ケース】Thermaltake CA-1J5-00M6WN-01 ¥4,117 【電源】玄人志向 KRPW-BK650W/85+ ¥6,264 【Wi-Fi/Bluetooth】Fenvi T919 ¥5,100 【合計】¥ 119,359
こちらも表にまとめると以下になります。
M1 Mac mini | 自作 macOS | |
CPU | M1 | 10700 |
GPU | M1 | RX-570 |
メモリ/SSD | 16GB/2TB | 16GB/2TB |
CPU シングル | 1,700 | 1,200 |
CPU マルチ | 7,500 | 8,500 |
GPU OpenCL | 19,500 | 40,000 |
税込価格 | 190,080 | 119,359 |
AppleのBTOでメモリ/SSDを追加すると割高ですね。自作との差額は7万円強になります。SSDを1TBにすれば、差額は縮まって5.5万円くらいです。純正か自作かどちらを選ぶか微妙になってきます。将来のアップグレードの可能性があるという点で、自作を選ぶ選択肢もありかと思います。
こだわりのパーツで自作
ここまで考えた自作構成は、M1のiGPUに合わせて、かなり控えめの構成です。こだわりのパーツで作ってみようと思ったら、この構成にはならないように思います。ある程度予算には配慮しつつも、こんな自作をしてみたいという構成を考えてみました。
【CPU】インテル Core i9 10900K BOX ¥58,376 【CPUクーラー】サイズ 虎徹 MarkII SCKTT-2000 ¥3,938 【メモリ】Corsair CMK16GX4M2A2666C16 [DDR4 PC4-21300 8GB 2枚組] ¥6,573 【マザーボード】ASUS ROG STRIX Z490-F GAMING ¥25,278 【ビデオカード】MSI Radeon RX 5700 XT GAMING X [PCIExp 8GB] ¥41,000 【SSD】crucial P1 CT1000P1SSD8JP ¥11,248 【ケース】Thermaltake CA-1J5-00M6WN-01 ¥4,117 【電源】玄人志向 KRPW-BK650W/85+ ¥6,264 【Wi-Fi/Bluetooth】Fenvi T919 ¥5,100 【合計】¥ 161,894
SSDは1TBで十分と考えました。CPUは一般向けIntel CPU最強の10900Kです。グラフィックスも、macOS対応モデル中最強クラスの5700XTです。マザーボードも良いものにしたいと考えました。良いマザーボードは高い部品が使われていて、手に持った感じがずっしりしていて良いです。でも、こだわったわりには、先ほどのリストから4万円くらいしか価格上昇してないです。
この構成を、同等のメモリ/SSD構成のMac miniと比較すると以下のようになります。
M1 Mac mini | 自作 macOS | |
CPU | M1 | 10900K |
GPU | M1 | RX-5700XT |
メモリ/SSD | 16GB/1TB | 16GB/1TB |
CPU シングル | 1,700 | 1,300 |
CPU マルチ | 7,500 | 11,000 |
GPU OpenCL | 19,500 | 69,200 |
税込価格 | 146,080 | 161,894 |
同じメモリ/SSD構成のMac miniと比べて、自作機は1.5万円くらい割高ですが、性能はとても良いです。この性能が必要かどうかは別として、自己満足できる数値だと思います。
まとめ
新Mac miniと自作macOSマシンを、コストパーフォマンス比較してみました。miniはコスパが高いので、実用的な性能のマシンを安く作りたいという動機でhackintoshする意味は無くなったかもしれません。hackintoshする動機の一つに、「Mac miniとMac Proの中間のディスプレイ無しデスクトップマシンが欲しい」という理由がありました。今回登場したM1 Mac miniのおかげで、その希望を叶える純正選択肢ができたと思います。
とはいえ、上位iMacに相当する性能には到達していません。インテルのiGPUに比べたらM1のiGPUは別格の性能ですが、RadeonシリーズのdGPUには劣ってます。またメモリ, SSD, PCIeなどの拡張性はありません。自作には、好きな部品を選んで、拡張や組み合わせを楽しむ余地が残っていると思います。自作PCの歴史を振り返ると、メーカ製品に比べてコスパが良いという理由で、Windowsマシンの自作が流行した時代がありました。今は、そういう動機の一般人は撤退して、楽しいから自作するという人(と、最近はゲーマーの人かな)だけが自作界隈に居る状態だと思います。hackintoshもそうなったのかもしれません。macOSがインテルプラットフォームから完全撤退するまでの間は、自作を楽しんでいきたいと考えてます。
「新Mac miniと自作macOSマシンを、コストパーフォマンス比較」記事の投稿、グッドタイミングで’す。
楽しく拝読させていただきました。
参考:
あえて、コストパーフォーマンス以外の要素で自作macOSマシンに惹きつけられる要素を上げてみます。
1. 構成パーツを交換可能 ー それによる自由度(柔軟性、拡張性)
2. Hacintosh環境の維持・保守作業は、苦しみではなく楽しみ(人生、チャレンジするのが楽しい)
3. 工夫すれば、ある程度 ”Apple識別コードをより新しいもの”(例 iMac18,3 ->iMac20,1)に変更可能。
これにより、macOSからのサポート終了時期(寿命?)を延命できる。
MOD、電飾、本格水冷、OCなんかもM1 Mac miniではできない楽しみ方かもです
コスパを考えだすと結構難しい感じにはなってきてますね。
自分の場合は使用用途に対する最適なMacの選択肢がないっていうのが最初の動機になってたんですけど、MacProの軽めなものが安価で出てきたり、MacMiniのもう少しグラフィック性能含め高性能なものが出てきたりすると考えちゃうかなって気がします。
そういう道理とは違った部分で、hackintoshにハマってしまったところもあって、問題が出たときにそれをクリアする面白さとか、今で言うと6800xtは動くのかなとか、カスタマイズする楽しみみたいなものは独特の魅力がありますよね。
Appleという巨大な企業が用意したもの、世の多くの人がもてはやしているものをそのまま受け入れるのがつまらないみたいなひねくれた感情もあって、自分でカスタマイズしたマシンに愛着が湧くのかもしれません。
M1Macは間違いなく大きな転換点だと思うんですけど、それに乗っかるのもなんだかなあっていう気持ちもあるんですよね笑。
というわけで、10900kマシンが落ち着いてきたので、もう少し拡張しようかなと考えています。
買って終わりではないのも自作の面白さなのかなと思うので、このカルチャーが続けられる限りは楽しみたいなあと。
>続けられる限りは楽しみたいなあと。
全く同感です。M1に、DIMMソケット、M.2ソケット、SATAコネクタ、PCIeスロット2-3本付いたMacが出たらかなり心が揺れますが、出そうにないので、しばらくは楽しめると思ってます。
とりあえず興味本位でM1 Air買ってみました。
10700で動くHackintoshとM1の比較なのですが、事実上10700の圧勝ですね。
用途としてはどちらも作曲・動画編集・コーディングです。
エンコード等の単純作業の場合、最適化が簡単なのかM1は調子よく動きます。
ただ、実際のところApple純正アプリ・ブラウザ以外はArmに最適化されていないためクリエイティブ作業をやろうとすると遅い/コケるがかなり多くストレスです。
特に音楽プラグインやデータベース計算など、スループットが必要かつシングルスレッドな処理ほど重い傾向にあります。
この、M1/Rosettaの苦手な領域のニッチなソフトや計算の場合、メジャーなものと違って直近の対応も期待できません。
実感としては「IntelベースのMacを自由に安く作れる」だけでもHackintosh作成の動機は価値が残っていくと思います。
>特に音楽プラグインやデータベース計算など、
>スループットが必要かつシングルスレッドな処理ほど重い傾向にあります。
藤本健さんの記事でも、同等のスピードというのではなく、重いっていう話ですねぇ。。。
M1チップ搭載の新型MacはDTMに使えるのか? DAW、プラグイン、オーディオインターフェイスなど動作状況をチェックしてみた
https://www.dtmstation.com/archives/32814.html
M1 Air ユーザー体験のタイムリーなご報告、ありがとうございます。
”M1/Rosettaの苦手な領域のニッチなソフトや計算の場合、メジャーなものと違って直近の対応も期待できません。”….. とのことですが、M1シリコン搭載機器の人気が高まってさらに多くのユーザーが増えるならばアプリ開発者もM1ユーザーの重要性を考えて、アプリの最適化(適応)が一段と進むのではと思います。
追記: 側から眺めている者としては、M1Airの別の魅力は 「一台の機器でMacOSアプリと iPhone/アプリの両方を動かせる」であり、行く末(将来)が興味深いです。
これを見込んで、さらにM1 Airユーザー(学生ユーザー、教育現場でのIT体験機器など)が急増するのでは?
M1 mac miniを買って感じたのですが、iOSアプリが動くというのがとても便利に感じています。
そのうちiOSアプリ開発者がmacアプリを作ってくれると思うと、層が暑くなる様な気がします。
16コア、32コアのApple Siliconも出そうな感じなので、今後に期待したいです。
春に買ったMB AirをM1 Airに鞍替えするつもりで速攻で売り払ってしまいました(出張激減で使う機会もあまりなかったし、、、)。まだ発注してませんけど(笑)
Nativeアプリがあまりないのと、Bootcampが使えないのがネックですかね。自作Hackintoshといろいろ戦わせてみたいと思います。
いずれにせよ、今後が楽しみです。
お疲れさまです、
M1はUMAという形でメモリドリブンへと動いた、身近な存在となったのだと思います。
https://blogs.itmedia.co.jp/appliedmarketing/2019/07/post_38.html
個人的には新しいアーキテクチャなのでほしいという欲求はでます。(いわゆるアップルらしいイケテル感^^;wがありますね。)
ただ、アーキテクチャが違うとなると、今までのプログラム資産は、エミュレーション(アーキテクチャが違うのでバーチャライゼーションできない)のがネックですから、まだまだ、熟成がいると思います。(特にGPU周りは機能特化しているのでもっと高速です。UMAでファブリックバスになってるとはいえ調停がいらないというわけでは無いはずですから、GPUの用に特化したバスはもっと調停が最適化されているはずです。)
また、SOP化しないとファブリックが成立できないのは、厳しいところです。これからいわゆるファブリックをどう実装するのかは、
https://www.publickey1.jp/blog/19/hpehpe_discovery_2019_las_vegas.html
このあたりが、先行して有望になるのでしょう。
また、ファブリックに関してはコンソーシアムが、2016年に立ち上がったばかりなので、
https://www.publickey1.jp/blog/16/gen-z_consortium.html
どうなるか・・・楽しみですね。
ATXがもう古いのはよく解っています。その後の、自作PCという門戸が別の形(アークテクチャ)で開けることを望みつつ待つことになりますね。そうなれば、もしかすると、エミュレーションという形でHackintoshも再構築されるかもしれません。
こわいよー、テレサおばさん((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル