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【2018年4月2日改訂:10.13.4以降のRadeonの近況を追記しました。】
【2017年12月17日改訂:Radeonの近況を追記しました。】
【2017年12月1日改訂:CloverのRadeon対応を追記しました。】
Hackintosh自作に適したグラフィックスカードを紹介します。
Table of Contents
NVIDIAかAMD(ATI)か
グラフィックスカードの2大メーカが、NVIDIAとAMDで、自作する人たちの中では、どっちが良いのかという議論で盛り上がることも度々です。歴代のMacintoshはそのどちらも使っていましたが、最近はAMD派です。ならばHackintoshもAMDが良い、と単純に決まりそうですが、そうでもありません。tonymacx86の推奨パーツのサイトでは、長らくNVIDIAのグラフィックスカードだけが推奨リストに挙げられていました。でも最近では、AMDのグラフィックスカードも少しずつ推奨されています。
では、実際のところどうなんでしょうか。結論を先に書いておくと、それぞれメリット、デメリットがあります。ただ、10.13.4になってからAMDが優勢です。
NVIDIAを選ぶメリット
- AMDに比べてハイエンドモデルのグラフィックス性能が高くで性能あたりの消費電力が少ない
- NVIDIAがmacOS用のドライバ(Web driver)を供給している。更新は早い
- Kepler (GTX 600シリーズと700の一部)以前ならmacOS標準ドライバだけで動く
AMDを選ぶメリット
- Final Cut Pro Xなどが最適化されているのでNVIDIAより高速に動く
- macOSにドライバが含まれているのでメーカ供給のドライバに頼らなくて良い
- macOS 10.13.4から外部GPUがサポートされて一部のモデルは接続するたけでそのまま使える
AMD
最近のMacintoshではAMDを採用しています。なのでHackintoshでもAMDが最適の選択のように思えるかもしれません。
macOS 10.12.5以前
しかし、Hackintoshのグラフィックスカードとしては、AMDは問題の多い選択肢でした。macOSにはAMDのドライバーが含まれているものの、実際にはモバイルバージョンばかりが採用されています。そこでデスクトップ用グラフィックスカードとの互換性が低かったのです。頑張ってカーネル拡張(kext)にパッチしても、スリープからの復帰が不安定だったり、起動時に画面が出なかったりしました。なのでtonymacx86のガイドでもAMDは推奨されていませんでした。
macOS 10.12.6 ~ 10.13.3
ところがSierraバージョン10.12.6で事情が激変して、AMDが一気に魅力的な選択肢になりました。きっかけは、2017年のWWDCでThunderbolt接続の外付けGPUサポートが発表されたことです。開発キットとしてアップルが販売開始した外付けGPUボックス(External Graphics Development Kit)にはAMDのRadeon RX 580が内蔵されていました。そこで、AMDの現行モデルの一部が、macOSのドライバで正式にサポートされたのです。AppleのExternal Graphics Development Kit はSonnet社の製品を使っています。そのマニュアルをこちらで紹介しましたのでご覧ください。
これによると、macOS 10.13.2で挿すだけで動くグラフィックスカードは、
- Radeon RX 470/480/570/580(特にSapphire Radeon PULSE RX580が良い)
- Radeon Vega 56/64
- AMD WX910
とのことです。ThunderboltはPCIeの信号をシリアル化して外部に引っ張り出したものなので、HackintoshでPCIe接続する場合においても、これらのカードを使うのが良いと思われます。
macOS 10.13.4 以降
10.13.4では外付けGPUボックスがいよいよ正式にサポートされました。その結果、10.13.3以前にあった問題点が全て解決されました。Apple社からも公式にサポートするグラフィックスカードが紹介されています。
これによると、Polaris, Vega 56, Vega 64の3種類のアーキテクチャがサポートされているようです。具体的なチップは、以下です。
- AMD Radeon RX 470, RX 480, RX 570, RX 580, Radeon Pro WX 7100
- AMD Radeon RX Vega 56
- AMD Radeon RX Vega 64, Frontier Edition Air, Radeon Pro WX 9100
Sonnet社も、10.13.4に対応して、詳細な互換性リストを発表しました。AMDグラフィックスカードを購入する場合は、以下の記事で紹介したSonnetのPDF資料に、互換性があると記されているカードを購入すると良いです。
とうことで、AppleやSonnetが推奨するAMD GPUを使えば、簡単にHackintoshできるので、お勧めです。このリストには比較的高価なGPUが多いのですが、お手軽なところではRX 570, RX 580でしょうか。
その一方、AMDの製品は、NVIDIAと比較して上位機種の性能、性能あたりの消費電力で未だに劣っています。ただ、macOSで使うことを前提にすると、OSで正式にサポートされているアーキテクチャなので、色々と最適化されています。例えば、Final Cut Pro Xなどを使って性能比較すると、NVIDIAよりも圧倒的に良いスコアを叩き出します。
OSが標準でサポートしてくれていることは、将来にわたって安心感があります。NVIDIAのWeb driverは、OSのバージョンアップにいまのところ敏速に対応してくれていますが、将来にわたって期待できる保証はありません。一方で、macOSが一旦サポートしたハードウェアは、NVIDIAの古いモデルと同様に、今後も機能し続けることが確実です。
AppleのExternal Graphics Development Kit には、SAPPHIRE PULSE Radeon RX 580が搭載されています。他のブランドでも問題ないと思いますが、SAPPHIREが少しは安心かもしれません。他社ブランドと比べても安価な部類のようです。ちなみにPULSEは代理店の扱いが終了してしまったようで今は入手困難です。現在はクロック数が上がり、放熱部品やコンデンサ部品が強化された上位モデルのNITRO+がSAPPHIREの主流商品です。こちらでこの製品を使用した結果を紹介しています。
NVIDA Pascal, Maxwell
MacintoshがこのところAMDだけを採用しているにもかかわらず、HackintoshではずっとNVIDIAが定番でした。昔、NVIDIAが採用されていた名残で、未だにドライバがOSに含まれていて、そのまま動いたからです。ただその魔法も、新しいアーキテクチャになると効かなくなりました。現行のPascalとその前のMaxwellアーキテクチャを採用したグラフィックスカードは、macOSの標準ドライバでは動きません。
一方でNVIDIAは、独自でmacOS用のドライバを開発して配布してくれています。なので、これ (NVIDIAのWebページで配布されていて、Webという名前の含まれるkext群で構成されるのでWeb driverと呼ばれます)を使えば、最新のPascalアーキテクチャモデルが問題なく動きます。もちろん、それ以前のモデルもサポートされています。AMDではmacOSがサポートしてくれるモデルに制限があったのに対して、NVIDIAではメーカーが配布してくれるWeb driverをインストールするだけなので、とても簡単です。Web driverはmacOSのバージョンごとに配布されています。機能はそれほど変わらないようですが、macOSのバージョンチェックをして、合致しないビルド番号では起動しません。以下のサイトで、それぞれのビルド番号に合ったドライバのダウンロードURLがまとめて整理されています。
macOSのビルド番号は、「リンゴマーク」「このMacについて」のOSバージョンの文字をクリックすると、その横に表示されます。下の例では17E202です。
PC自作ユーザ向けの最上位機種、GeForce GTX 1080Tiはとても強力で、性能あたりの消費電力も低いです。その一つ下のモデルのGTX 1080でも十分強力です。最近発売されたAMDのVega 64でも、性能は1080にある程度追いついたものの、価格と消費電力で負けているようです。なので、グラフィックス性能を重視したらNVIDIAが良いと思います。特に、Windowsと併用するとか、グラフィックス性能を必要とするゲームをするなどの場合は、NVIDIAを選ぶことにメリットがあります。
グラフィックス性能は不要という人も多いと思います。普通にGUI操作したり動画を見る程度では、グラフィックス性能は問題にならないのも事実です。現行のNVIDIA製品の最下位GT 1030を使用するのも良いでしょう。8,000円程度です。ファンレスモデルもあります。
1030はローコストだけど性能は高いようです。
Web driverのおかげてNVIDIAならどれを選んでもだいたい大丈夫ですが、中には多少相性の悪いモデルもあるようです。例えば、GTX 1060はスリープからの復帰でノイズが出る問題が指摘されています。
今後、すぐに対応されるとは思いますが、その上位・下位の別モデル、1050tiや1070を購入した方が良いかもしれません。
NVIDIA Kepler以前
Keplerアーキテクチャとそれ以前の古いカードも良いです。というのは、これらはWeb driverを入れなくても(入れても機能します)macOSの標準ドライバだけで動くからです。OSのバージョンアップに伴う新Web driverの発表を待つ必要もありません。(もっともNVIDIAの対応はとても早くで、24時間くらいで新OSに対応してくれますが)
macOSの標準ドライバだけで動く古いNVDIAカードはたくさんあります。例えば以下のような製品が手に入るなら、安価に使えるようです。
- nvidia gt 9400
- nvidia gt 9500
- nvidia gt 210
- nvidia gt 220
- nvidia gt 9600
- nvidia gt 240
- nvidia gts 250
- nvidia gt 610
- nvidia gt 630
- nvidia gt 640
- nvidia gt 710
- nvidia gt 730
追記:High SierraではKeplerは動くけど、それより古いFermiは動かなかったという報告があるようです。あまり古いものは避けて、Keplerのモデルにしておいたほうが無難かもしれません。できるだけ安く探すとなるとGT 710とかGT 730あたりでしょうか。
Intel CPU内蔵GPUは使えるか?
現行のMacintoshでもIntel CPU内蔵GPU (iGPU) を使っている機種はあります。が、それらはMacBookシリーズやMac miniで、モバイル用のCPUを使っていて、iGPUのモデルがデスクトップ用CPUと違います。でも、違うとは言っても、ある程度の互換性はあるようで、デスクトップ用CPU iGPUはHackintoshで「なんとなく動く」のが実情です。「なんとなく」というのは、時々画面が乱れるけど大体使える、とか、スリープからの復帰に失敗してハングする、とか、そういう状態です。iMacではAMDのGPUとデスクトップ用CPU iGPUが併用されることもありますが、使い方が違うのか、だからと言ってすんなり動くわけではないようです。ここで紹介したAMDかNVIDIAのグラフィックスカードを使用するのが良いと思います。
ということで、Kaby Lake, Skylake世代のiGPUは実用的ではないと思います。サーバにして画面はネット越しにしか見ないとか、スリープはさせないとかの使い方ならよいかもしれません。これに対して、Haswellでは、内蔵GPUがちゃんと使えました。Hackintosh界隈では、Haswellは良かったという声が聞こえます。もともと、Intelのデスクトップ用CPUの内蔵GPUはモバイル用に比べて非力です。モバイル機種に負けるようなグラフィックスは諦めて使わない、と考えるのが良いです。