Radeon Rx 580, Vega 64, RX 5700 XTの性能をGeekbench 5で比較しました。いずれもmacOSで動きますが、上位モデル・最新モデルの性能を引き出せていないようです。macOSしか使わないのであれば価格・電力性能比の良いRX 580が良いです。
巷のRadeon評価
AMDのRadeonシリーズGPUとmacOSの互換性は高く、現行製品のほとんどがmacOSで使えます。でもWindowsで動かすほどの性能を引き出せていないという意見をよく目にします。実際のところはどうなのかを、Radeon現行製品それぞれのアーキテクチャ製品を比較して調べました。現行製品のアーキテクチャと代表的な上位モデルを列挙すると次の表になります。製品は左カラムから右へ、発売日順に並んでいます。
580 | Vega 64 | VII | 5700 XT | |
構造 | Polaris | Vega10 | Vega20 | Navi(RDNA) |
線幅 | 14nm | 14nm | 7nm | 7nm |
CU数 | 36 | 64 | 60 | 40 |
SU数 | 2,304 | 4,096 | 3,840 | 2,560 |
ROP数 | 32 | 64 | 64 | 64 |
クロック数 | 1,257MHz | 1,274MHz | 1,400MHz | 1,605MHz |
メモリ | GDDR5 | HBM2 | HBM2 | GDDR6 |
消費電力 | 185W | 295W | 300W | 225W |
4K性能 | 31.2fps | 47.5fps | 57.0fps | 56.0fps |
価格 | 23,441円 | 33,131円 | 103,763円 | 49,784円 |
ここで4K性能と書いた部分は、gpucheck.comでの結果です。演算性能よりはCG性能を重視した評価指標かと思われます。詳細な比較結果は以下をご覧ください。

この表の製品のうち、580とVega 64は去年(2018年)の製品です。なので発売当初の半額から1/3程度の値段で買えます。VIIと5700 XTは、今年(2019年)発売の製品なので、まだ価格は高いです。プロセッサー数などの仕様と発売当初価格から分かるように、Vegaアーキテクチャの2製品は、Radeonシリーズの最上位モデルです。それに対して、5700 XTは580/590に相当する中位モデルです。でも本年モデルのVIIと5700 XTを比較すると、5700 XTのコストパーフォマンスと、電力パーフォマンスがとても良いことがわかります。5700 XTはAMDのGPUとしては久々の優れたモデルとして人気があるようです。ただこれはWindows環境での話です。macOSではどれも動作はしますが、ドライバの作りが完璧でないためか、Windows環境と同じような性能は得られていないようです。
Geekbenchで測定
macOS環境では、それぞれどのような性能なのでしょうか。VIIは用意できなかったので、それ以外の3機種、RX 580, Vega 64, 5700 XTをGeekbench 5で調べました。RX 580がオリジナルファン版、他はリファレンス版です。
- SAPPHIRE NITRO+ RADEON RX 580
- MSIブランドのリファレンスファンRadeon RX Vega 64
- ASUSブランドのリファレンスファン Radeon RX 5700 XT
今回はRX 580としてNITRO+を使いましたが、PULSEの方が安いですし、Apple純正のeGPUで採用されてますので何かと安心かと思います。一時期販売終了していましたが、最近は安定供給されているようです。
Geekbench 5のGPUベンチマークには、OpenCLとMetalの選択があります。それぞれを交互に5回測定しました。5回測定したものの、最初の1〜2回に良いスコアが出て、それ以降はだんだん低下していくようでした。おそらくはベンチマーク実行のためにGPUが発熱し、速度が抑えられるのでは無いかと思います。
特に、Vega 64は発熱が激しく、基板バックパネルの温度で52度以上になってました。触れない熱さです。GPU本体はもっと高温になっていると思います。それだけ電力を消費しているということですね。その一方で、580と5700 XTのバックパネルはほんのり温かくなる程度です。
ちなみにここで使った温度計は、AliExpressで送料込み800円くらいで売っている非接触赤外線温度計です。レーザ光線も出てカッコ良いです。
AliExpress.com Product – IR Digital Temperature Meter
ということで、以下の比較では、5回測定したうちの最高スコア(大体は1回目のスコアでした)を採用しました。
測定結果
ベンチマークの結果を下に示します。上の表から、gpucheck.comの値も書いておきました。これはWindows環境のベンチマークなので、項目名の頭に(W)と書いておきます。今回測定したOpenCLとMetalのベンチマークはmacOS環境なので、項目の頭に(M)と書いておきます。
580 | Vega 64 | VII | 5700 XT | |
(W) 4K性能 | 31.2fps | 47.5fps | 57.0fps | 56.0fps |
(M) OpenCL | 47807 | 61330 | 51988 | |
(M) Metal | 49600 | 60577 | 41266 |
RX 580, Vega 64, RX 5700 XTのOpenCL/MetalのGeekbenchスコアをグラフにすると以下のようになります。
こうしてみると、Windows世界の評価に対して、かなり異なる結果になりました。まず、Vega 64は確かに高速です。でもWindwos環境だとRX 580の1.5倍くらい速いことになっていますが、こちらの結果では1.3倍くらいです。また、Windows環境ではVega 64よりも高速な5700 XTに至っては、RX 580と比較して、OpenCLで10%くらい高いスコアを出している程度で、Metalでは負けています。
手元の環境だけの異常なスコアなのかとも思いましたが、Geekbenchのサイトで検索しても似たような結果でした。下は、Geekbench 5のcompute resultsで、RX 5700 XT macOSで検索した結果です。
Metalのスコアは大体、30000後半から40000台でした。上記のスコアは一般的な結果のようです。
まとめ
5700 XTは残念なスコアでした。RX 580とVega 64に近いGPUは、Mac製品に搭載されています。しかし5700 XT、もしくはそれに近いGPUは採用されていませんでした。そのため、macOSのドライバーが5700 XTのアーキテクチャに十分に対応していないのかもしれません。
でも、つい最近に出た16インチMacBook ProではNaviアーキテクチャGPU (Radeon Pro 5300M, 5500M) が搭載されています。10.15.1で5700シリーズが動いたのもこのおかげかと思います。ちなみにProと名前がつくモデルはアップル専用モバイルチップです。強そうな名前ですが、実は計算ユニット数やクロック数を多少減らして発熱を抑えたチップです。Appleの公式サイトによると、前モデルのRadeon Pro 560Xに比べてRadeon Pro 5500Mは2.1倍速いそうです。Radeon Pro Vega 20と比較しても35%速いそうです。新MacBook Pro対応のmacOS (多分10.15.2)になれば、ドライバが改良されて性能改善されるのではと期待しています。